【デジタルエンタメ最前線】「お父さんがマジコンで遊べって…」子供が“犠牲者”に

2009.11.19

 ゲーム業界の経営陣にとって、いま一番頭の痛い問題は、不況でも任天堂の失速でもなく、コピー問題だ。業界にとって、「一番儲かるハード」とは、「一番コピー率が低いハード」ということになりそうなのだ。

 ゲーム業界では、マイクロソフトが開発中のコントローラーを使用しない新技術「プロジェクトナタル」など、次世代技術に対する期待感が高まっている。だが、それ以上に注目されているのは、どのメーカーが一番コピーしにくいハードを出すか、ということだ。

 任天堂の失速の要因として引き合いに出されているのは、第4のハードと言われるアップル「iPhone」の好調。

 実際、iPhone向けのゲームコンテンツは破竹の勢いでダウンロード数を伸ばしている。

 ところがコピーに関してもiPhoneは大人気で、10月に配信を開始したあるゲームは、世界中のコピー率が90%を超えているという。正規版で遊んでいるユーザーは10人に1人しかいないというわけだ。このニュースに、業界関係者の多くは頭を抱えている。

 ある有力ゲーム会社幹部は「日本ではニンテンドーDSなど向けのソフトをコピーできる『マジコン』がはやっているが、コピー率はiPhoneほどひどくはない。iPhone向けのビジネスは、とりあえず様子見ですね」と顔をしかめる。

 さらに、コピー問題で業界関係者を困らせているのは、著作権に対する親の意識が低いことだという。業界関係者は次のようなエピソードを語る。

 「あるゲームソフトのイベントで、特別なアイテムをその会場内だけで配信したのです。すると、小学生くらいのお子さんが『受け取れない』とスタッフに質問してきました。実は、このアイテムはマジコンユーザーは受け取れないような仕組みになっていたのです。『君のソフトはマジコンだよね?』と聞くと、『だって、お父さんがこれで遊べって…』と半べそ状態になってしまったのです。お子さんはアイテムを受け取るために遠路はるばる来ていただけに、私も複雑な気持ちでした」

 iPhoneのプロテクトの甘さも問題だが、なによりユーザーサイドの「ただで遊びたい」という気持ちのほうが業界にとっては難問だろう。ゲームソフトは単価が高いだけに、不正な手段でゲームを入手しようというユーザーは、不況期には特に増える。

 しかし、この問題を放置することは、業界の消滅を意味する。「ゲームソフトは、買って遊ぶともっと楽しい」という意識をユーザーに実感してもらうにはどうすればよいのか。業界の知恵が試されている。(石島照代)