「デジタルサイネージ」(電子看板)は、新しい広告ツールやメディアとして注目を集めている。現在は閉鎖された空間、あるいは目的意識を持った人たちが集まる場所に設置してあるものが一定の成果を上げているが、究極的には街の至る所にデジタルサイネージが置かれ、さまざまな人たちの目に触れて効果を上げるのが理想だ。都心の商業施設などでデジタルサイネージを展開している事例を紹介しよう。
東京・六本木の2大商業施設、六本木ヒルズと東京ミッドタウンには壁面や通路などに大小さまざまなモニター群が設置されている。いずれも、通り過ぎる人たちの目を引くような映像で、イベント告知やニュース、施設案内などが表示されている。ミッドタウンでは、タッチパネル式の案内板で情報検索もできるようになっており、場所に不慣れな国内外の観光客らが利用する姿を見かける。
これらのすべてを運営している会社が、パナソニックから2001年にスピンアウトした「ピーディーシー」。日本のデジタルサイネージ業界を牽引する1社だ。
「2003年にオープンした六本木ヒルズは、日本で最初にデジタルサイネージを導入した商業施設です。これを機に他の施設にも展開し、デジタルサイネージはいまや街作りに欠かせないツールになりました。07年オープンの東京ミッドタウンも成功したモデルですね」と語るのは、同社取締役システムビジネス部長の田中真吾氏。
同社の特徴は、コンサルからシステム設計、配信システムの構築、映像コンテンツの制作・運用・効果測定をトータルで請け負い、目的とする効果が出るまで何度でもコンサルからやり直すサイクル状の運営にある。
DVDやCDのレンタルチェーン店「TSUTAYA」も同社の顧客。カウンターや棚の上部に設置されたモニターに流されている新作紹介やランキングなどの映像はピーディーシーが配信しているものだ。また、千葉市が地域活性化のために行っている店舗検索やイベント情報の発信なども請け負っている。こちらは、携帯電話でも情報を引き出せる連動型のタイプだ。
田中氏は「デジタルサイネージの引き合いは年々多くなっています。モニターなどのハードだけでなくネットワークのコストも下がっているので、従来の紙ポスターと費用を比較しても十分にメリットがあると広告主に認知されているようです」と言う。
そのうえで、「不況と言われる時代だからこそ、デジタルサイネージをもっと活用するべき」と力説する。
「デジタルサイネージは表示の内容を簡単に変えられるので、たとえば災害時には避難誘導板に切り替えることも可能です。選挙ポスターにも利用でき、紙の張り替えは必要なくなります。コンテンツ制作のため、若く才能のある人を雇用する機会も増えます」
そのトップランナーとして、同社に対する期待は高い。
「注目の業界ですから海外の企業も新規参入を狙っています。それに対しては、コスト面の安さだけを強調するのではなく、きめ細やかなサービス、いわゆる“おもてなしの心”を前面に出していこうと思います」
デジタルサイネージに関しては、各国がデファクトスタンダードを目指して、しのぎを削っている。パソコンやインターネットで米国に先鞭を着けられた日本が“巻き返し”を図れる分野のひとつだけに、今後も要注目だ。(松本佳代子)