【マンション業界の秘密】迫るコスト増&サービス低下… 深刻化する管理人不足に抜本的な解決策がないワケ

管理費を上げざるを得ない事態が迫りつつある

 日本は全体的に人手不足に陥っている。私が見る限り、業種や年齢層に関係はない。

 先日お会いしたあるメガバンクの行員氏は、年齢が50代初め。なのに支店の役席の名刺を出された。よく聞くと、人手が足りないから銀行から出されないのだと。

 50になって支店長になれないメガバンクの行員は外に出されるものだと聞いていたが、時代は変わった。

 奈良の奥地で木製品の工場を経営している親戚がいる。やはり人手不足で困っていると。パートさんの年齢が高くなり過ぎて、若い人の補充がつかないとか。

 失業率は完全雇用水準をも下回っている。求人率も高い。その一方で、貧困問題は解決の兆しさえみえない。何ともいびつだ。

 マンション業界では、もう10年も前から建設現場での人手不足が建築コストを押し上げる現象に苦しめられてきた。そして今度は、管理人の人材不足がクローズアップされている。

 さもありなん。マンションの管理人需要は増えこそすれ減ることはない。なぜなら、分譲マンションが立ち続けているからだ。

 それに対して、管理人の募集に応募するボリューム層である60代人口が激減している。なぜなら、団塊世代の最後尾は現在68歳。管理人の定年とされる70歳に近づいている。つまり、今の管理人不足は今後ますます深刻化するということだ。

 この問題に抜本的な解決策はない。60代人口なんて、増やしようがない。かといって50代や40代の現役世代にとって、管理人での収入はあまりにも少ない。子供を育てられるレベルではない。

 では、どうなるのか。

 まず考えられることは、人がいない分だけ管理サービスのボリュームを減らすことだろう。

 100戸くらいまでのマンションなら、管理人の主な仕事は共用部分の清掃とゴミ出しだ。今まで週に5日、管理人に来てもらっていたのを3日とか2日に減らして、最低限の作業を行ってもらう。現に、そういう対策を行っている物件も多いと聞く。

 もう1つは、管理人の賃金を引き上げて50代やそれよりも若い世代にとっても、魅力的な仕事にする。そのためには管理費が2倍に値上がりしても受け入れるくらいの覚悟が必要だ。

 そもそも、分譲マンションで暮らすこと自体がぜいたくなのだ。皆でお金を出し合って管理人を雇い、共用部を清掃させてゴミを出してもらい、自転車置き場の整理などもしてもらっている。戸建て住宅に住んでいれば、すべて自分でやらねばならない。

 今後、管理費は人件費の上昇で値上がりしていくはずだ。つまりマンションに住むコスト自体が上がっていく。そして、サービスは徐々に低下していくだろう。

 マンションというのは日本人にとって、まだまだ完成していない住形態。そのことを理解した上で購入を検討すべきだと思う。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。