【マンション業界の秘密】高層階は「成功の証し」 階層ヒエラルキーが生む悲喜劇「低層階の人たちは…」

高層階vs低層階。些末な話ではある(写真と本文は関係ありません)

 相変わらずタワーマンション(タワマン)に人気がある。私は何冊か書いた本の中で、タワマンに関しては「必要悪」という立場を取っている。

 都心の限られた場所で多くの住戸を作るためには仕方がないという考え方だ。しかし、多くの人はそう考えない。ここに住むことは成功の証しと考えている。

 タワマンに何かメリットがあるとすれば、それは眺望だ。地上から何十メートルも高い場所だからこそ味わえる開放的な景色が広がる。

 ただ、それは毎日変わらない。私の多くの知人たちもタワマンに住んでいる。彼らに聞くと「飽きるよ」という答えが多い。同じ景色を眺めるのだから仕方がない。

 タワマンには厄介なことも多い。その1つが階層ヒエラルキーだ。

 昨年、「砂の塔」というテレビドラマが放映されて話題になった。分譲価格が高い高層階の住人が、「低層階の人たちは…」というたぐいの発言でヒエラルキー意識をあらわにする。一方、低層階に住む若いお母さんは「うちの主人は高所恐怖症で…」と始終言い訳をしていた。

 ああいういびつな意識は日本人特有のものかと思っていたら、最近DVDが発売されたイギリス映画の「ハイ・ライズ」でも同じようなシーンが出てきたので驚いた。

 以下は都心のタワマンに10年近く住んでいる方から聞いた話。ある人は階層ヒエラルキーに悩み、7階→13階→21階というように、順次高層階へ向かって買い替えているそうだ。ママ友グループで低層階居住をバカにされるのが嫌で、引っ越していった家族を何組も知っていると。

 低層階で下りのエレベーターに乗り込む時に高層階から乗っている人から冷たい視線を浴びるというのはよく聞く話。朝の混み合っている時間ならなおさらだろう。

 湾岸のタワマンに住むのは見えっ張りな人々…これは私の主張ではない。とある財閥系大手のマンションデベロッパーが作成した広告代理店向けの資料に書かれていたこと。だから「ターゲットの見えをくすぐるような広告表現を提案しろ」という意図なのである。

 見えっ張りな人が集まって住んでいる限り、階層ヒエラルキーは必ず発生するだろう。そこから生まれる悲喜劇は今日もどこかで繰り返されているはずだ。

 タワマンを、人生の忙しい時期を過ごす必要悪な住居と思えば、ヒエラルキー意識は希薄化する。住民同士、お互いが仮住まいなのだから、妙な対抗意識を燃やさないで済む。

 リタイアの時期になれば、低層の落ち着いた住まいに引っ越せばいい。その方がかなり健康的だ。急に具合が悪くなって救急車を呼んでも、救急隊員が駆け付けるまでの時間、搬出して病院に到着するまでの時間も低層住宅の方が短くて済む。必然的に生還率も高くなる。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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