【マンション業界の秘密】修繕コストの高いタワマン、メンテナンス面で大きなハンディキャップ 湾岸エリアは外壁劣化も早い

意外とメンテナンスが高くつくタワマン(写真と本文は関係ありません)

 2年半ほど前、東京の湾岸エリアにある54階建てのタワーマンションで、管理組合が大規模修繕の見積もりを依頼したゼネコン5社が、見積もり自体を辞退する出来事があった。工事規模は当初20億円が想定されていたという。

 見積もりを辞退した理由は分からない。しかし、営利企業が約20億円の売り上げを得る機会を拒むということは、相当な理由があるのだろう。

 結局、その工事はこのマンションを施工した準大手のゼネコンが17・5億円で受注したらしい。現在は大規模修繕工事中ということだ。

 ところが、54階のタワマンともなると、大規模修繕工事に3年程度の期間を要する。そもそも建設するためには3年もかかっていないはず。なぜ、修繕工事にそれほどの時間がかかるのか。

 タワマンは、柱と梁、そして床スラブ(コンクリートの床板)以外は、プレキャスト(工場で作られたコンクリート製品)の建材を組み立てて建築する。外壁はほぼALC(軽量気泡コンクリート)パネル。これをサッシュ(窓枠)などとともに組み立てていく。住戸間の壁も乾式壁をはめ込むだけ。

 だから外壁や戸境壁にコンクリートを流し込む通常の板状マンションに比べて建設期間は2倍程度速い。1カ月で2層分は作れてしまう。

 しかし、外壁の修繕となると足場が組めないので、屋上からクレーンで足場やゴンドラをつるすことになる。

 強風の日は危険で作業ができない。ゴンドラや足場が1層1層順番に移動していくので、1層の修繕工事を行うのに約1カ月かかる。建築期間の2倍の速度だ。

 大規模修繕の費用も、板状型のマンションなら1戸当たり100万円が目安だが、タワマンの場合は250万円前後。板状型の約2・5倍になる。

 さらに板状型のマンションなら施工精度によって外壁の修繕工事は30年以上必要でない場合がある。

 しかし、タワマンは十数年に1度は必ず外壁の修繕工事を行わないと雨漏りのリスクが高まる。外壁に使用されるALCパネル同士やサッシュなどの建材との間に充填されているコーキング剤が雨漏りなどを防いでいるが、コーキング剤は年月とともに必ず劣化する。

 特に湾岸エリアのタワマンは潮風にさらされるので、劣化が早いと考えられている。だから、十数年ごとの外壁修繕工事が必要となる。

 1戸当たり250万円前後かかる大規模修繕の費用も、新築十数年後の1回目なら問題なく負担できる。しかし、建物も所有者も高齢化してくる30年後、50年後もスムーズに費用が集まるだろうか。

 タワマンはメンテナンスの面でかなり大きなハンディキャップを背負った住形態と言える。特に東京の湾岸エリアはプールや大浴場といった30年後から50年後には必ず管理のお荷物になる豪華施設を備えた物件も多い。そちらの面でも要注意だ。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。