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【田村秀男 お金は知っている】北への国連制裁強化にだまされるな 習政権の策謀に引っかかった米国、幻想から抜け出せない理由 (1/2ページ)

 国連安全保障理事会は先日、北朝鮮への新たな制裁決議案を採択した。原油や石油製品の輸出上限枠を設けたことや、北からの繊維製品輸入を禁止したことから、メディアの多くは「大幅な制裁強化」と評価するが、だまされてはいけない。外交官僚が「成果」を取り繕っただけである。中国が強力な米国案を葬り去ったというのが真相だ。

 石油製品上限枠、年間200万バレルの設定を例にとろう。対北輸出のほぼ全量が中国からの輸出である。中国の輸出入管理・税関事務を行う中国海関総署統計をもとに作成したのが本グラフである。パイプラインを通じた中国からの対北原油供給は同総署の管轄外だが、石油製品についてはデータを把握している。

 それによると、習近平政権下の中国は対北石油製品輸出を増やし続け、2016年年間で200万バレルの水準とし、2年半で倍増させた。そして、今年に入って減らし、7月までの1年間では158万バレルに落ち込んでいる。すると、今回の「制裁」による上限を大きく下回っているのだから、今後中国は制裁破りの非難を浴びることなく、北向けにガソリンや重油、軽油の輸出を増やせるではないか。国連制裁決議は原油の対北輸出を過去12カ月間の合計量、すなわち現状維持としており、削減されるわけではない。

 習政権は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に対し、「米国の石油禁輸案を引っ込めさせたし、従来通り供給できるようにした」とするメッセージを発したことになる。朝鮮戦争(1950年6月~53年7月)で北と「血の友誼(ゆうぎ)」を交わした中国共産党の習総書記は10月の党大会で、「対米譲歩」の批判をかわし、権力基盤をさらに固めるわけだ。

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