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【BOOK】サントリー創業者の評伝小説 伊集院静さん「今の日本は工業系の教育が伝えられていない」 (1/3ページ)

★伊集院静さん『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎』集英社(上)(下)各1600円+税

 男の生き方を問うて大人気のベストセラー作家が、初めて企業人の評伝小説を書いた。現在のサントリーの創業者、鳥井信治郎。日本に洋酒文化を根付かせ、斬新な宣伝広告で世間を驚かせた大阪商人の“男っぷり”が心地よい。(文・梓勇生 写真・今野顕)

 --大阪・船場の商人の修業や育て方、しきたりが丹念に描かれている

 「花登筺(はなと・こばこ)さん(「細うで繁盛記」「どてらい男」などで知られる作家)の大阪もの、出世もののドラマや谷崎潤一郎、松竹新喜劇などを見ていて、船場の商人や、丁稚奉公といったことは体に入っていましたから」

 「父親も商売をしており、辛い修業や奉公といったものが何となく分かっていましたしね。『藪入り』(年2回の奉公人の休み)の習慣もギリギリで知っています。父親が盆休みに従業員を田舎に帰すとき、土産を持たせたり、新しいシャツをあつらえたりしているのを間近で見ていました」

 --独立した信治郎は、日本人の口にあうぶどう酒(赤玉ポートワイン)の開発に勤しむ。経営者でありながら、技術者というところが面白い

 「昔は皆そうでした。松下幸之助(現・パナソニックの創業者)もトヨタもホンダなども、日本の有力企業の大半がそうでしょう。この技術力があったからこそ、資源もない日本が経済大国となることができたんです。信治郎の技術力の高さは戦前、イギリスのタイムズ紙にも取り上げられたくらい。『いつか日本が出てくるぞ』って」

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