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大前研一氏 マイナス成長を生き延びるためにはDXが不可欠 (3/3ページ)

 もちろん国自体もDXが不可欠だ。しかし、マイナンバーカードの普及率は19.1%(8月23日時点)にすぎない。マイナンバーカード所有者を対象に買い物などで利用できるポイントを累計で1人あたり最大5000円分還元する総務省の「マイナポイント」事業が9月1日から始まったが、おそらく効果は限定的だろう。キャッシュレス決済もポイント還元事業が終わって伸び悩んでいる。

 そうした中で消費税率の引き下げを求める声もあるが、借金が1100兆円を突破しているこの国の財政状況を踏まえると、もはや減税はあり得ない。もう無駄な選挙民サービスはやめて、まず21世紀型の新しいスキルを身につけるためのリカレント教育と大失業時代に備えたベーシック・インカム(BI)など最低限のセーフティネットの整備に注力すべきである。

 あとは私が以前から提案しているように、所得税や相続税を廃止して資産税にシフトする根本的な税制改革を断行しなければならない。そうすれば、金融機関の預貯金口座に眠っている1800兆円以上の個人金融資産が表に出てくるし、世界から富を呼び込むこともできるのだ。

 このようなゼロベースの改革に安倍首相は全く手をつけてこなかった。しかし、ウィズコロナ/アフターコロナの時代の日本にはそれが絶対に必要なので、新首相には大胆な構造改革を期待したい。「アベノミクスを責任を持って引き継ぎ、さらに前に進めていきたい」などと言う人には、ないものねだりかもしれないが。

 ●大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は小学館新書『新・仕事力 「テレワーク時代」に差がつく働き方』。ほかに『日本の論点』シリーズ等、著書多数。

 ※週刊ポスト2020年10月2日号

NEWSポストセブン

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