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【日本の元気 山根一眞】不可能を可能に「未来を拓くルナ・クルーザー」 (2/2ページ)

 番組では最後に私が未来を想起するキーワードをその場で書き、締めくくっていたが、そこで思いついたのが、以前にも触れた「環業革命(環境による産業革命)」という言葉だった。

 その5年半後、FCVは発売されたが、高価格であり、水素ステーションの普及が十分ではないことなどから普及しなかった。電気自動車(EV)はリチウムイオン電池搭載モデルが主流となり、トヨタは大きく出遅れたまま。トヨタのFCVは消え去る運命かと思っていたが、どっこい、月面有人与圧ローバ構想として蘇ったのだ。保守的なトヨタをそこへ向けたJAXAもエラかった!

 トヨタは、きわめて過酷な環境である月面走行を想定したルナ・クルーザーの開発で得るノウハウを、地球での究極のエコカー、FCVの普及に向ける狙いのはずだ。今年度中に試作車を製作し、JAXAとともに2029年の打ち上げを目指している。30人のエンジニアたちは打ち上げ予定の8年後、いや20年後の世界を思い描きながら開発に取り組んでいるはずだ。

 ルナ・クルーザー計画は、「壮大な夢を目指すことは、直近の不可能を可能にする大きな力となる」ことを物語っているが、さて、菅内閣の面々は…。

 ■山根一眞(やまね・かずま) ノンフィクション作家、福井県年縞博物館特別館長。愛地球博愛知県総合プロデューサーなど多くの博覧祭も手がけてきた。近刊は『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』。「山根一眞の科学者を訪ねて三千里」(講談社)を連載中。理化学研究所名誉相談役、JAXA客員、福井県交流文化顧問、獨協大学非常勤講師、日本文藝家協会会員。

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