巨艦トヨタ禁じ手!? 不況で国内工場閉鎖踏み切るか

2009.11.09


決算会見で、「中長期的な構造の課題にも取り組む」と発言した一丸陽一郎副社長【拡大】

 トヨタ自動車はついに国内工場の閉鎖に踏み切ることになるのではないか−。専門家の間でこんな観測が浮上している。トヨタといえば、国内の工場閉鎖などは行わないことが「社是」のようになっている。が、好調時に工場の生産能力を増強し続け、それが自動車不況の今、アダになっているのも事実。ひところは日本国債よりも高い信用格付けをもらい、拡大路線をひた走っていた巨艦トヨタ。難しいかじ取りを迫られている。

 「短期的な収益の改善だけではなく、中長期的な構造の課題にも取り組み、最高の(事業)モデルを作り上げる」

 5日午後、トヨタ東京本社(東京都文京区)で開かれた中間決算発表。記者会見に出席した一丸陽一郎副社長(61)の発言に報道関係者が色めき立った。

 トヨタが抱える構造的な課題とは、過剰な生産能力のこと。自動車販売が好調だった昨年まで、トヨタは国内や米国を中心に毎年50万台規模で生産能力を引き上げ、その能力は年産1000万台規模に達している。

 それが一転、昨年秋のリーマン・ショック以降は自動車不況に直面し、トヨタの年間販売台数は700万台を下回る水準まで下落。年間300万台の余剰生産能力を抱えてしまう。

 トヨタは終戦直後に破綻の危機に直面し、人員削減はしないという労使間の協約を泣く泣く破ったことがある。その苦い経験から、国内工場の閉鎖やそれに伴う人員削減は絶対行わないというのが「社是」のようになっている。

 一丸副社長が会見であえて「構造の課題にも取り組む」と発言したことは、“タブー”になっている国内工場にもついに手を付けるのではないかとの観測を呼んだ。

 決算会見後、報道陣に取り囲まれた一丸副社長は国内工場を閉鎖する可能性について、「(現時点で)そのような計画はない」と否定した。しかし、拡大路線に走りすぎて今期も巨額赤字が続くトヨタだけに、可能性は依然残ることになる。

 また、トヨタでは折からの「円高」に対応するため、日本で生産、輸出している車種について、現地生産に移行する動きも出始めている。このことも、国内工場の生産縮小や閉鎖に現実味を帯びさせている。

 今年6月に就任した創業家出身の豊田章男社長(53)は、住宅事業や金融事業の再編など大規模なリストラ計画を相次いで発表した。住宅事業は豊田章一郎名誉会長(84)が立ち上げ、金融事業は奥田碩元社長(76)が手がけたもので、「創業家の章男社長でなければ手を付けられなかった」(業界関係者)といわれる。

 「これらに着手したということは、豊田社長のリストラにかける意気込みは本物。国内の本格リストラの地ならしではないか」(自動車ジャーナリスト)とみられ、国内工場の閉鎖もあるのではないかとの観測につながっている。

 一方、市場には「過剰生産設備の問題はあるものの、トヨタはラインや工場閉鎖などの単純なリストラには乗り出さないだろう。日本で中国などの新興国向けの低価格車をつくるような生産改革による“構造改革”をトヨタは考えているはず」(JPモルガンの高橋耕平アナリスト)との見方も。巨艦・トヨタの今後の動向が注目される。