【森岡英樹の金融スクープ】財務省による東京メトロ株の売却と石原都知事の思惑

2010.03.16


東京メトロと外資と新銀行東京。石原都知事の思惑はどこにある?【拡大】

 2010年度にも株式上場を目指す東京地下鉄(東京メトロ)をめぐり、財務省と石原慎太郎・東京都知事が火花を散らしている。財務省が政府保有株の6割(総定額約1019億円)を売却する計画などと報じられたことに対し、石原知事は「売るなら売ったらいい。東京都はその分を買う」と猛反発。一体、どういうことなのか。

 東京メトロは、全株式のうち政府が53.4%、都が46.6%を保有する公営企業で、将来的に政府と都は全株式を売却し、完全民営化させる方針でいる。

 当初の計画では、09年度に上場し、政府も保有株の売却を始める予定だった。しかし、世界的な金融危機に伴う株式相場の低迷を受け、昨年秋に上場時期を10年度以降に先送りした経緯がある。

 また、都営地下鉄とメトロの統合をにらむ都は、メトロへの発言力を保つ狙いもあり、今回の政府株の売却には慎重で、いっそのこと買い取りも辞さない構えでいる。

 5日の定例会見で石原都知事は、財務省のメトロ株売却について聞かれ、「(政府に)言われて一緒に売るつもりは毛頭ない。この株安の時代になんで売るのか。政府は自業自得で財源が足りないかもしれないが、東京都は余裕がある」と突っぱねた。

 それとともに「(都営地下鉄とメトロの)2つの会社を統合するためにも、東京メトロのイニシアチブを東京都が完全に握ったら都民にとっても有利なことになる」との見方を示した。

 メトロは、帝都高速度交通営団を04年4月に民営化して設立され、09年3月期の売上高は連結ベースで3813億円、営業利益875億円をたたき出す超優良企業。鉄道部門の売上高や営業利益はJR3社に次ぎ、利益率は東海道新幹線で稼ぐJR東海に匹敵する。

 一方、鉄道各社にとって環境問題(CO2削減)はプラス要因ではあるが、航空路線との競合や高速道路の無料化の影響もあり、JR、大手民鉄は苦戦を強いられている。その点、メトロは195キロメートルがすべてドル箱路線で、東京一極集中の日本にあってこれほど有利な企業基盤の会社は見当たらない。

 海外の資本から見ても垂涎の的なのだが、見逃せないのは、石原都知事の思惑だろう。

 昨年末のインタビューで、再建途上にある「新銀行東京」の今後に関して、こんな意味深長な発言を行っている。

 「(新銀行東京の再建の筋道として)外国のパートナーの問題だ。例えば米金融大手のゴールドマン・サックスみたいなところは東京メトロの株に関心を持っている。そういう存在を複合的に活用して銀行をどう介在させていくか」

 東京五輪の誘致問題が過ぎ去ったいま、石原都知事にとって頭痛の種は「新銀行東京」に他ならない。その新銀行東京の再建とメトロの上場が、ゴールドマン・サックスなどの有力外国資本を介することで、点と線で結ばれるようにも読み取れる。

 メトロ株の上場に際し、外資系証券が引受証券として参画するだけでなく、出資もするのではないか。こう見るのはあながち的はずれではないように思えるのだが…。

■もりおか・ひでき 1957年、福岡県出身。早稲田大学卒。経済紙記者、埼玉県芸術文化振興財団常務理事などを経て2004年4月、金融ジャーナリストとして独立。