有名英会話学校「NOVA」や「ジオス」などの運営会社が身売りすることになった。同社の親会社は、金融庁検査を妨害したとして事件化した日本振興銀行の融資先。事件のトバッチリを受け資金繰りに窮した親会社が、傘下の運営会社を手放すことになったのだ。
身売りするのは、居酒屋チェーンから英会話学校まで幅広い事業を展開する「ジー・コミュニケーション」(名古屋市、非上場)。
振興銀系の外食産業支援会社「フーディーズ」(東京、非上場)が保有する50・9%のジー社株すべてを、焼肉チェーン「牛角」のフランチャイジーを傘下に持つ阪神酒販(神戸市、非上場)に8月末までに譲渡する。譲渡額は非公開。
親会社であるフーディーズは、振興銀の取引先企業。振興銀が金融庁から業務停止処分を受けたことから、新規の融資が受けられなくなり、資金繰りが悪化した。「フーディーズがジー社株を取得する際に負った借入金を、阪神酒販が継承することを条件に、ジー社株売却が決まった」(関係者)という。
NOVAなどを傘下に持つジー社はもともと、学習塾として創業。2000年に居酒屋店を開店したのを機に外食産業に進出した。05年ごろから積極的なM&A(企業の合併・買収)を展開してグループを拡大。
さかい(旧社名・焼肉屋さかい、名古屋市)、ジー・テイスト(旧社名・平禄、回転寿司の元祖・平禄寿司、村さ来などを運営、仙台市)、ジー・ネットワークス(旧社名・パオ、長崎ちゃんめんなどを運営)の上場外食3社を買収した。
07年10月には、会社更生法を申請したNOVAのスポンサーになり、傘下に収めた。
しかし、急激なM&Aでジー社の資金繰りが悪化。創業者の稲吉正樹会長(41)は、保有していたジー社株を09年10月に売却した。
売却先は、外食の開業支援を手掛けるフーディーズとベンチャー・リンク(東京)。いずれも、振興銀の親密融資先で構成する「中小企業振興ネットワーク」の加盟企業だ。
ジー社株50・9%を取得し、筆頭株主になったフーディーズは、ジー社を介してM&Aに乗り出したものの、買収資金を出していた振興銀が業務停止命令を受け資金パイプが詰まった。
そんなフーディーズからジー社株を取得する阪神酒販は、英会話事業を続ける方針。NOVAやジオスの受講生たちは、新しいスポンサーのもとで授業を受けることになる。
阪神酒販は01年、檜垣周作社長(34)が酒類販売業を起こしたのが始まり。
「阪神酒販は酒類販売がさっぱりだったので業態転換した。オフィスに冷蔵庫を無料で設置し、飲料を詰め込み、後で回収して歩く。富山の置き薬方式で飲料を販売するオフィスオアシスで急成長している会社です。昨年から、M&Aによるグループ化に乗り出した」(企業調査会社幹部)
09年5月、「牛角」のフランチャイジーを傘下にもつアスラポート・ダイニング(東京都港区)をTOB(株式公開買い付け)で子会社化。10年4月には、日本アジアグループ傘下の酒類販売会社、大酒販(横浜市、非上場)の全株式を譲り受けている。そして今回、ジー社を買収する。
M&A資金はどこから出ているのか。
「阪神酒販の大株主には、投資事業組合オリックス10号をはじめ投資事業有限責任組合が名を連ねています。(阪神酒販は)今では、投資会社に変貌している」(先の企業調査会社幹部)
それにしても酒屋と英会話学校。何でもありのM&Aの世界とはいえ、奇妙な組み合わせだ。
