みずほ3行統合と大和銀頭取の“信託兼営”論

2011.07.06


銀行は合併・再編の歴史−。佐藤康博社長の下でみずほが動き始めた【拡大】

 銀行の歴史はつまるところ「合併・再編の歴史」で、過去のデジャブ(既視感)にとらわれる場面に出くわすことも少なくない。6月22日に、みずほフィナンシャルグループの社長(兼みずほコーポレート銀行頭取)に就いた佐藤康博氏が、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行の統合に、みずほ信託銀行を加えた「3行統合の可能性」に言及したことは、普通銀行が信託業務を兼営するという古くて、新しい金融制度の根幹に触れるテーマを呼びさました。

 この日、株主総会後の取締役会で社長に就任した佐藤氏は、記者会見に臨み、焦点のグループ内の再編について、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行の統合による「ワンバンク化」を進める一方、みずほ信託についても「立ち位置をどうするか。信託兼業という問題にかかってくるが、将来的な問題として、銀行でどこまで取り込んでいくのかというのが、当然一つの課題になってくる」と語り、個人的な見解だが、「信託業務は、本来銀行顧客とのつながりが強い業務なので、できればひとつの箱でやった方が効率性も利便性も高いと思っている」と、銀行・信託の統合を視野に入れていることを明らかにした。持ち株会社傘下の3銀行が統合すれば、顧客利便性からみてグループの競争力が一挙に高まることは間違いない。

 だが、ハードルは残されている。なにより三井住友トラスト・ホールディングスや三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の三菱UFJ信託などの専業信託銀行との競争条件をどう整理するのかという問題や、「兼業する不動産業務について、宅建業界との調整が不可欠となる」(信託銀行幹部)といえる。「仮にみずほグループが持つ広範な店舗網で不動産業務を展開すれば、街の不動産屋は確実に潰れると予想される。国土交通省との調整は難航しよう」(同)というわけだ。

 同じように信託を兼業しているりそな銀行についても、信託業務の取り扱い店舗が、旧大和銀行の店舗に制限されているのもこのためである。しかし、顧客利便からみれば、普通銀行が信託業務を兼業するメリットが大きい。それを明確に示しているのが、大和銀行の元頭取であった寺尾威夫頭取の論文である。

 大蔵省は、戦後、「信託主業化」の方針を掲げ、それまで信託業務を兼営していた4都市銀行と地方銀行から信託業務を分離する行政指導を行った。中心的に動いたのは当時の銀行局長であった高橋俊英氏であった。この当局の指導に対し、地方銀行や3都市銀行は応諾し、信託部門を分離したが、唯一、これに反対した銀行頭取がいた。それが大和銀行の寺尾氏であった。この両者の対立は国会問題にまで発展したが、この時、寺尾氏が自ら執筆し、国会に提出したのが、信託兼営の論文であった。寺尾氏が最後まで引かなかったのは、「顧客のために信託を兼業する」の一点。そして、大和銀行は唯一、信託業務を兼業する都市銀行として残った。

 そして今、みずほフィナンシャルグループは、商業銀行部門と信託銀行部門を統合する案を練っている。時代は繰り返すという他ない。

 ■森岡英樹(もりおか・ひでき) 1957年、福岡県出身。早大卒。経済紙記者、埼玉県芸術文化振興財団常務理事などを経て2004年4月、金融ジャーナリストとして独立。

 

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