定年後の田舎暮らしに落とし穴!命の危険も

2012.03.15

 定年後、田舎でセカンドライフを過ごしたいという人は当然ながら風光明媚(めいび)な土地に家を建てたがる。定年退職者をターゲットにした雑誌に「南国沖縄でゆったりスローライフ」とか「伊東の高台に見つけた“温泉付き”終の棲家」などの見出しが付けられた特集記事が並ぶ。暖かくリゾート気分が味わえる沖縄、広大な土地が広がる北海道、東京都心に近い信州が移住先御三家。

 しかし、田舎暮らしの動機が「自然が美しくて空気がきれいだから」という理由だけならやめたほうがいい。泣きをみることは必至だ。

 風光明媚なところは災害と隣り合わせ。自然が美しいのは「生活環境が厳しい」ということでもある。美しい風景だけに目を奪われて安易に移住先を決めると、あとで「こんなはずではなかった」とほぞをかむことになりかねない。

 独特な沖縄文化に憧れ癒やしを求めて、何年も前から沖縄ブームが続いている。中でも人気なのが石垣島。この地域は台風の常襲地で、最大瞬間風速が70メートル前後に達することも珍しくない。にもかかわらず眺望や採光、通風など自然を楽しむため海が見える高台に全面ガラス張りの家を建てる人がいる。高台なら津波の心配はないが、大きな台風なら強風で家はもろにダメージを受ける。建築業者とトラブルになるケースも多いそうだが、これぞまさに自己責任。

 自然の脅威だけではなく、もう一つ重要なのは社会的インフラ。常識では考えられない山奥に家を建てて「水道を引いてほしい」と役所に要求する人もいるという。電気やガス、水道などライフラインは移住する前に最低限チェックしておく必要がある。これらのインフラを自前で整備しようと思ったら、巨額の費用がかかる。そんなことも調べずに移住先を決めてしまう人がいるのだ。

 不動産会社の経営者が、東京に近い湘南に移住した人のケースを話してくれた。

 「私の友達でね、海っぺりに家を買って生活していたんです。海の見えるところで暮らすのが夢だったそうなんです。ところが、実際に住むと夏は海水浴客で騒がしく、逆に秋冬は火が消えたように寂しくなる。わずか3年で東京へ戻ってしまったよ。業者の口車に乗って、自分の目で確かめないから失敗する。安易な方へ乗っかると思わぬところでけつまづいてしまう。そういう例が多いですよね」

 田舎での暮らしやすさは人によってライフスタイル、趣味、生きがいが異なるから、それぞれ基準が違って当たり前。単に自然があるから、生活費が安いから、逆に便利だからなどと画一的な価値観でくくろうとしても意味がない。イメージだけで移住先を選ぶと失敗する。住みやすいかどうかは、試しに何日間か滞在してみるといい。

 移住地を選ぶ際、地元住民でもいいが、できれば他の地域から越してきた先輩移住者に話を聞いて地域の特性をよく確かめること。その地域の最も厳しい季節を確認しておくのも大事なことだ。

 ■大宮知信(おおみや・とものぶ) ノンフィクション・ライター。1948年、茨城県出身。中学卒業後、東京下町のネジ販売会社に集団就職。その後、調理師見習い、ギター流し、週刊誌編集者など20数回の転職を繰り返し、現在に至る。政治、教育、移民、社会問題など幅広い分野を執筆。近著に『部長が中国から来たらどうしよう』(徳間書店)。

 

注目情報(PR)