定年退職者に忍び寄る甘いワナ…悪徳シニアビジネスに注意を!

2012.04.13


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 悪徳商法といえば昔から主婦、高齢者、若者が三大ターゲットだった。最近それに加えて定年退職者が餌食になるケースが増えている。リタイアリーが手にする退職金を狙って、まともなビジネスも悪徳業者も、60歳の定年前から網を張って待っている。

 海外不動産購入をめぐる詐欺、詐欺まがいの金融取引、詐欺すれすれの悪徳商法。海外宝くじ、海外商品先物取引、外国為替証拠金取引、未公開株など、引っかけるネタがよくもまあ次から次に出てくるものだと感心する。

 前回シリーズ「定年後の落とし穴」で自費出版のトラブルが続出しているという話を紹介した。悪徳出版業者の手口は「○○さんぐらいの読書家でしたら、当然本を出すのに費用がかかることぐらいはもうご存じでございましょう」という話から始まる。持ち上げながら法外な値段で自費出版の契約を交わしてしまう。

 業者はシニアの欲と無知につけ込む。低金利時代の有利な金融商品として、昨今人気のある投資信託。いうまでもなく投資だから元本を割り込むリスクがある。元大手出版社の敏腕編集者だったA氏(65)は、銀行員に勧められるままに退職金で投資信託を購入したが、見事に失敗したとぼやいている。

 「まんまと銀行の口車に乗ってしまった。いま400万円の含み損を抱えている。早めにやめちまおうと思ってこの間一部を解約したけど、分配金を差し引いても30万円の赤字になった。ま、そういう意味ではオレも典型的な日本のサラリーマンだよ。勉強しようと思って(経済誌の)『ダイヤモンド』なんか買って読んでみるけど、よく分からないんだ。新聞なんかにもよく投資信託のワナとか、リスクを覚悟でやるんだよという記事が出てるけど、そんなこと分かってるよ。分かってるんだけど、定年後は甘いワナに引っかかっちゃうんだよね」

 高齢者になるほど情報リテラシー(読み解く能力)が低下するといわれている。現役の世代も自分が属する業界には詳しいが、専門外のことはど素人。悪徳商法の被害を見ると、なぜこんな単純なインチキに引っかかるのかと首をかしげてしまう事件が多い。自費出版にも見られるように自尊心をくすぐられ、おだてられてつい誘いに乗ってしまうということもあるのだろう。

 悪徳商法に引っかからないようにするには、「言葉より文書を重視し、契約書にない話をする場合は用心せよ」ということは常識中の常識だが、それ以前の問題として、とにかく業者の口車に乗らず、現役時代からその分野の調査研究をしておくこと。何の予備知識もなく業者任せにしていては、ハッピーリタイアメントがアンハッピーになりかねない。

 ■大宮知信(おおみや・とものぶ) ノンフィクション・ライター。1948年、茨城県出身。中学卒業後、東京下町のネジ販売会社に集団就職。その後、調理師見習い、ギター流し、週刊誌編集者など20数回の転職を繰り返し、現在に至る。政治、教育、移民、社会問題など幅広い分野を執筆。近著に『部長が中国から来たらどうしよう』(徳間書店)。

 

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