耐震性、省エネ性といった性能を満たした住宅を、買い手が求める価格でどのように提供していくか。保険業界から転じた若きリーダーがこだわるのは顧客目線。日々刻々と変化するニーズ、環境へ機敏に対応できるグループづくりを目指す。
──屋上付きの木造住宅が好評のようですね
「今年3月から『青空リビング』のブランドで展開しています。花火大会の会場付近、あるいは東京スカイツリーが見える場所では特に人気が高いです」
──木造で屋上付きは珍しい
「防水技術の発達で実現可能になり、いち早く商品化しました。以前は雨漏りする可能性があったため、木造の屋上付き住宅はほとんどなかったのです」
──住宅密集地だと屋上は貴重なプライベート空間
「狭い敷地で1階に車庫を確保したら庭はほとんどなくなってしまいます。でも屋上があればそこは立派な“庭”。晴れた日に読書、知人を招いたバーベキューパーティーなど多目的に使えます」
──昨年の震災により消費者の住宅観は大きく変わったのでは
「耐震性はもちろん、省エネ性についての関心が急激に高まりました」
──省エネ性は電力事情を受けたものですね
「今年に入ってから、新築のお客さまのうち5〜6割が太陽光パネルを設置しています。現在は余った電気を売ることも可能です。当社のアンケートによると、売った電気の額が電気料金を上回った方の割合は(パネル設置住宅の)80%超にのぼりました」
──固定費の節約はありがたい
「そのほか断熱材の事業にも力を入れています。断熱材で家をくるむことによって冷暖房した空気が家の中で保たれ、結果的に冷暖房費の削減につながります」
──社長は保険業界から住宅・不動産分野へ。全く異なる世界への転身ですね
「セブン−イレブンで成功された鈴木敏文氏は『自分は業界外からやってきた』とおっしゃられています。他の業界から入った、ある意味で素人だからこそ、顧客目線の考え方ができる。そこが強みにもなっていると思います」
《鈴木氏は流通業界に入る前、出版関連の商社勤務だった》
──大切なのは顧客の目線
「どの業界でも同業他社の動きを気にしがちです。しかし、お客さまが何を求めているのか、環境がどう変化しているのか、それを見極められないと先の手が打てず、競争に勝てない。セブン−イレブンは業界の常識にとらわれず、常に新しいサービスを導入してきました。(セブンが)顧客目線を継続するのはすごいなと思うと同時に、われわれもそうありたいと思っています」
──今後の目標を教えてください
「ここ4〜5年の間にM&A(合併と買収)によって新しい会社をグループに迎え入れ、新たな領域に参入してきました。これはとても刺激があり、勉強になり、知識を含めた幅が広がりました。今後もグループ全体の成長という大きなテーマの中でM&Aは大きな戦略の柱です」
──軸はやはり住宅・不動産分野でしょうか
「一足飛びに全くの異業種への参入は考えていません。住宅、不動産関連でもやれることはまだたくさんあるはず。時代が変われば、求められるものも変わる。変化に対応できるグループにしていきたいです」 (久保木善浩)
【大学】慶大商学部を卒業。就職活動のタイミングがバブル絶頂期と重なったこともあり、「周りも金融機関に就職する人が多かったですね」。
【就職】大手生命保険会社に入社。映画『ウォール街』(1987年公開)のようなお金を運用する仕事に憧れていた。「当時、お金をたくさん持っていた保険会社で運用に携わってみたいと思っていました。でも、運用の仕事をかじることもなく担当はずっと営業でした」
【「リーダー」を学ぶ】生保では第一線のセールス・レディーを管理する役割を任された。当時の経験が社長業の糧になっている。「いかに(部下の)モチベーションを高め、目標を達成していくか。そのために何が大事で、逆に何をやってはいけないのか。入社2年目ぐらいから人の引っ張り方を学んだのは貴重な体験です」
【オフ】趣味のスポーツバイク(自転車)で汗を流す。2年近く前からダイエットやストレス解消のため本格的にスタート。休日には埼玉を中心に荒川沿いのサイクリングロードを50〜100キロ近く走っている。「自転車にはメーターがあって時速のほかに走行距離、平均速度など色々な数値が分かる。そうすると『次は○キロで走りたい』『○分で走りたい』という目標ができる。それをクリアしたいと思って走るのが面白いですね」
【好きな本】村上春樹氏の各小説。浪人時代に通った予備校で村上氏の父から国語を教わった縁もあり、「『ノルウェイの森』が出る前から色々な作品を読んでいました」。
【音楽】中学、高校の頃にバンドを組んで活動。担当の楽器はギター。英ギタリスト、リッチー・ブラックモアの楽曲などをカバーしていた。
【カラオケの十八番】ミスターチルドレンの「しるし」。
【お酒】もっぱらワインで、そのほかに焼酎とビール。ワインだとボトルの半分程度が適量。「昔はまったく飲めませんでした。今では仕事が終わると飲まずにはいられなくなっています」
【睡眠時間】6〜7時間。
【思索のとき】朝方に布団の中であれこれと考えることが多い。「社員の前でこんな話をしようかな、とか、次に何をやろうか、とか。1人の時間なので色々なことが思い浮かびます」
【性格を自己分析】「合理主義的でドライな面、そして浪花節的な面と、両面ありますね」
【会社メモ】注文住宅、不動産などグループ企業の中核。名証2部上場。本社は埼玉県久喜市。1988年設立。エコハウスを中心とした規格型注文住宅の請負、施工のほか、首都圏で分譲住宅を展開。断熱材生産が成長している。資本金3億3990万円。売上高391億5500万円(2011年12月期)、従業員1195人(グループ計、9月末現在)。
■近藤昭(こんどう・あきら) 1967年4月22日生まれ、45歳、神戸市出身。慶應義塾大卒。大手生命保険会社や外資系保険会社勤務を経て、2001年に東日本ニューハウス(現・桧家ホールディングス)に入社。専務取締役、副社長を経て、2009年から現職。
