よくわからない「発送電分離」 電力改革論は役所の“机上の空論”?

2013.02.24


「電力システム改革専門委員会」であいさつする茂木経産相【拡大】

 電力改革の具体的な議論が動き出した。経済産業省の「電力システム改革専門委員会」はこのほど、改革を3段階で進める方法論を提示した。最終的に電力供給体制を「発送電分離」にもっていこうという改革論だ。しかし、その考え方や論法は、庶民にはよくわからないところが多く、所詮、役所論議でしかないとの声があがっている。

 専門委員会がまとめた報告書は、改革の第1段階として「電力需給を広域で調整する『広域系統運用機関』を設立」し(2015年めど)、第2段階で「家庭向け電力小売りの完全自由化」(16年めど)。第3段階で「発電と送配電を分離する」(18〜20年めど)というものだ。広域系統運用機関というのは、電力が余っている地域から不足している地域に送配電するよう電力会社間の調整を図るほか、全国的な送配電網の整備計画をつくる。2、3段階目の実行に向けての準備・整備の実行である。

 そして電力自由化の“本命”といえる電力小売りの全面解禁へと移る。一般家庭でも他地域の大手電力や新規参入する新電力会社から自由に電気を買えるようになる。需要家が供給者を選べるようになるのだ。これまで住んだ場所で所定の電力会社からしか電気を買えなかったのが、料金を見比べて、気に入った電力会社と契約を結び、電気を購入することが可能になる。電力会社間に競争原理を持ち込んで、電気料金の抑制につなげていこうという改革原理だ。この小売りの自由化はすでに中小工場など大口(50キロワット以上)契約者との間では進んでいて、いよいよ一般家庭が対象となる。

 しかし、企業のような大口需要家なら、料金問題はシビアに反応するだろうが、一般家庭では、たとえば1カ月の電気料金が10、20円安くなるからといって新契約を結ぶだろうか。年間料金が半額以上安くなるといえばその気にもなるだろうが、そうしたケースはまず考えにくく、“効果”はあまり想像できない。ただ“地産地消”といった地域ぐるみでの独自の電力需給システムは増えるかもしれない。

 3段階目の発送電分離も狙いと効果がよくわからない。経産省の思惑は、「分離して競争原理を導入する」というだけ。しかし、発送電分離で先行した欧米の改革では必ずしも電気料金の抑制には結びついていない。むしろ、停電の頻発などマイナス面が目立つ。発電会社と送電会社は別々の経営体となるので、それぞれのコスト計算で設備投資が図られる。発電会社が発電能力を増強し、契約をいっぱい取っても、送電会社が投資を怠り、(変電所を含む)送電設備が老朽化したり、設備増強を怠ったりしたら、安定供給に支障が出る恐れがある。

 もう一つ、いまほとんどが休止している原発をどう位置づけるのかも問題だ。原発は発電会社に属することになるが、稼働の見通しがたたないのだから、発電会社は経営計画が立てられない。銀行から見放される懸念すら大いにある。

 原子力利用計画、エネルギー基本計画がきちんとあって論議をしなくては所詮“机上の空論”でしかない。経産省は「初めに発送電分離ありき」で議論してきたのだろうか。議論の途中で政権交代があったが、経産省の中で大きな方針転換はなかったようにみえる。(産経新聞編集委員・小林隆太郎)

 

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