大学や宗教法人は「プロ投資家」といえるか 駒大など資産運用で損失…

2013.05.01


高野山真言宗では実務トップの庄野光昭・宗務総長(中央)が辞任する事態に=24日【拡大】

 東京地裁で注目の判決が言い渡された。ドイツ証券が提案したデリバティブ(金融派生商品)取引で多額の損失が出たとして、駒沢大学が69億5200万円の損害賠償を求めていた裁判で16日、太田晃詳裁判長は「取引解約の際、証券会社が免責されるとの合意があった」として請求を棄却したのだ。

 駒大は2007年に資産運用の一環として「通貨スワップ」と呼ばれるデリバティブ取引を契約、ドイツ証券との間で米ドルと円を交換する取引を始めたが、直後の世界的な金融危機による急激な円高で損失が拡大。担保の資金追加を何度も求められたため「双方の義務・責任は終了する」との英文の確認書を交わして08年に解約すると、清算金として63億円超の支払いを強いられた。この解約について、駒大は「取引は公序良俗に違反し、確認書の文面は曖昧で無効」と主張したが、判決では「(確認書の文面は)曖昧とはいえず、契約上、駒沢大の賠償請求権は消滅している」とされた。

 駒大は07〜08年にかけて同様の「通貨スワップ」取引をBNPパリバ証券など他の外資系証券とも行い、計154億円に及ぶ損失の穴埋めのため、世田谷の野球部グラウンドを担保にメーンバンクから110億円の融資も受けた。訴訟には、追い詰められた大学の苦しい台所事情が影を落としている。

 だが、駒大のケースは氷山の一角に過ぎない。「デリバティブを組み込んだ仕組債投資で巨額な評価損を抱え、身動きがとれないでいる大学も少なくない」(市場関係者)という。例えば、立正大は、国内の証券会社を通じ、欧州の国債など外貨建て債券を購入したが、その後の円高と債券価格の急落で損失が拡大、148億円の損失を計上した経緯がある。

 こうしたデリバティブ取引を巡る損失は大学にとどまらない。空海(弘法大師)が開創した宗教法人高野山真言宗が資産運用で6億8000万円の損失を出したことが明らかになっている。

 高野山真言宗は02年から資金運用をはじめ、約28億6000万円を運用していた。問題の損失を計上した取引は、07年ごろから償還された資金の再運用で4〜5年満期の商品。このうち昨年までに満期になった運用資産分で6億8000万円の損失が生じた。運用元本は昨年5月時点で約16億5000万円まで目減りしているという。この取引もデリバティブを組み込んだ仕組債とみられており、新興国通貨にも投資されていた。

 借り入れがほとんどなく余裕資金が豊富な大学や宗教法人は資産運用に積極的なことで知られている。「リスク度の高いデリバティブ商品投資にも前向きだった」(外資系証券)という。だが、高いリターンに着目するあまり、リスクの見極めが十分に行われていたかどうかは疑問だ。訴訟の焦点は、果たして大学や宗教法人がプロの投資家といえるのかどうか、投資に際して解約時の条件も含めのリスクをどこまで把握していたのか、「適合性の原則」が問われている。

 ■森岡英樹(もりおか・ひでき) 1957年、福岡県出身。早大卒。経済紙記者、埼玉県芸術文化振興財団常務理事などを経て2004年4月、金融ジャーナリストとして独立。

 

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