お札発行増で日中GDP再逆転へ! 中国は景気悪化でも金利下げられず

2013.05.17


お札刷り増し競争は日中逆転【拡大】

 黒田東彦(はるひこ)総裁の日銀は「異次元の金融緩和」を掲げ、2008年9月のリーマン・ショック後の世界的量的緩和(中央銀行による継続的なおカネの大量発行)競争に遅ればせながら「参戦」し、円安・株高を演出している。

 対照的なのが中国である。中国人民銀行はリーマン前、後を問わずしゃにむにお札を刷っては国有商業銀行に資金を流し込み、地方政府や国有企業による不動産開発など国内投資を活発化させてきた。2桁台の高度成長を続け、10年には名目国内総生産(GDP)で日本を抜き、米国に次ぐ世界第2位の経済大国の座に押し上げた。

 日銀は「リーマン」が起きて米欧が大々的な量的緩和に乗り出しても、円資金の発行を抑制してきた。1998年から始まった慢性デフレは悪化し、12年の名目GDPは97年に比べ50兆円以上も縮小した。

 グラフは日銀と中国人民銀行の資産の月ごとの前年比増加額を円ベースにして比較している。中央銀行の資産はおカネ、つまり通貨の発行を増やせば増やすほど増える。人民銀行は日銀の数倍以上の速度で資産を増やしてきたが、昨年初めから急速に鈍化し始めた。日銀のほうは昨年秋からようやく資産を増やし始め、「アベノミクス」に後を押されながら増加量は人民銀行を完全に抜き去り、黒田日銀体制発足後は差を大きく広げる勢いである。

 カネの量の日中再逆転は金融市場や経済実体の明暗を反映しているようにも見える。日本の株価の回復はめざましいのに比べ、上海株価は一進一退の状況から抜け切れない。しかも中国のモノの動きを示す鉄道貨物輸送量はことしに入っても前年比ゼロ以下の伸び率であり、経済の実勢は深刻な不況の局面にある。

 11年後半に崩落しかけた不動産市況は今、国有企業による投資で小康状態だが、以前のように人民銀行が巨額の資金を供給して不動産や株式市場をてこ入れする素地はすでに失われている。

 グラフの中の人民銀行の外国為替資産増加額の推移を見てほしい。人民銀行は中国に流入する外貨を買い上げては人民元を発行する政策をとってきたが、不動産市況の下落とともに外貨の流入が急激に減るにつれて、人民元資金の増発規模も大きく減ってきた。

 つまり、中国の通貨供給は外貨の流入量によって制約される。人民銀行は外貨流入を促すために人民元の対ドル相場を小刻みに切り上げざるをえないし、景気が悪化しても金利を大幅に下げるわけにもいかない。ドルに対して安くなる円に比べて、人民元は逆の方向に振れる。このままだと領土問題による日中関係の悪化を別にしても、日本企業は中国で生産して輸出するよりも、日本国内で生産するほうが有利になる傾向が今後、強まるだろう。

 金融の量的緩和が先導する円安・株高に油断することなく、安倍政権は税制などでも企業による国内投資と生産の回帰を促し、日中のGDP再逆転につなげる戦略を見据えるべきだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

 

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