東京五輪のプラス効果も…依然険しい「脱デフレ」の道

2013.09.13

 「2020年東京五輪」決定に続き、9日発表の4〜6月期の国内総生産(GDP)2次速報値が年率3・8%に上方修正された。そこで安倍晋三首相は10月初めにも、昨年の「3党合意」に基づく予定通りの消費増税に踏み切らざるを得ないとの見方が政界では多数を占めている。筆者はそれでも安倍首相は3党合意通りの増税には応じないとみる。なぜか。

 「アベノミクス」の本質を最もよく心得ているのは、安倍首相本人のほか、菅義偉官房長官、経済指南役の静岡県立大・本田悦朗教授と浜田宏一エール大学名誉教授であり、共通の最優先目標は「脱デフレ」。その実現に向けた首相の信念はまさに政治生命そのものと言っていい。

 安倍首相は財務官僚のシナリオに従うと「15年デフレ」の泥沼にはまり、抜けられなくなるという疑念を抱いている。財務官僚OBでありながら、消費増税によるデフレ圧力を強く懸念する本田氏と、1997年度の“橋本増税”の失敗を教訓にするべきだと主張する浜田両教授をアドバイザーに選んだ背景である。

 本田氏は木下康司財務次官と同期で意思疎通が良好だが、首相の意を裏切ることがない。本田氏が出した増税修正案は税率引き上げ幅を1%にして段階的に上げていく。その案は第1段階2%の上げ幅もオプションにしている。本田案には財務省寄りの経済学者の中にも賛同者がいるほどだが、中小企業者の間に事務負担が煩雑と反発が強い。

 浜田教授の1年延期案はその点、すっきりしている。アベノミクスの脱デフレ効果はあと1年で軌道に乗り、賃上げの基調が定着すれば、増税に伴う消費意欲の減退を避けられる。浜田教授は1年延期しても、15年には増税は必ず実行すると首相が確約すれば、財務官僚や日経、朝日新聞などのメディアが喧伝する「国債暴落」不安も払拭できると踏んでいる。

 だが、政治的な難点がある。順当に行けば次の衆院総選挙は2016年12月になるが、増税を1年ずらすと2016年10月に消費税率10%への引き上げとなり、選挙で与党にとって不利になるとの見方が多いのだ。

 首相決断の原点は、繰り返すが「脱デフレ」につきる。日本型デフレとは物価の継続的な下落と、それを上回る賃金の下落速度のことで、安倍首相はこの点をよく理解している。

 そこでグラフをみてほしい。この7月までの勤労者世帯主の平均月収と消費者物価指数(CPI)をそれぞれ12カ月単位で算出し、対比させている。勤労者収入の減り方は物価のそれと依然として大きな開きがある。消費増税で物価が上がっても賃金が上がらなければデフレ基調に舞い戻りかねない。東京五輪のプラス効果は間違いないだろうが、脱デフレの決め手になるはずはない。

 首相が「増税」包囲網の中で「脱デフレ」の道を示すためには、少なくても来年4月の3%税率アップは圧縮せざるをえないだろう。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

 

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