「もうけより困っている人助けたい」と雨水博士に 雨水利用の普及に努める元保健所職員

2013.09.13

 近年、しばしば局地的な豪雨が発生して洪水の被害をもたらすようになった。雨は「流せば洪水、ためれば資源になる」と天水(あまみず)研究所代表の村瀬誠さん(64)。元東京都墨田区の保健所職員だが、雨水利用の普及に努める「ドクター・スカイウオーター(雨水博士)」として、世界的にその名が知られる。

 2009年に定年退職し翌年、天水研究所を設立。国際協力機構(JICA)の協力を得てバングラデシュの2カ所に工場を開設、雨水をためて飲み水にするタンク「AMAMIZU」を製造・販売している。貧困層を対象にしたソーシャル・ビジネス(社会貢献事業)だ。海外で雨水タンクの事業に乗り出すきっかけは洪水対策だった。

 「都市開発でビルや住宅ができて道路が舗装され、コンクリートジャングルになって雨が地下に染み込まなくなり、大雨が降ると洪水騒ぎが発生する。これは何とかしたいな、と」

 1994年に雨水利用東京国際会議が開かれ、村瀬さんは実行委員会事務局長を務めた。これがきっかけで雨水市民の会が生まれ、雨水利用の活動が始まった。

 「2000年に初めてバングラデシュを訪れたのですが、悲惨な状況でね。地下水が有害な天然のヒ素に汚染されていて、多くの人が安全な水を手にできない。そこで何かいい方法はないかと。そのとき思いついたのが雨水。これでヒ素中毒から救えるのではないか」

 容量約1000リットルのタンクを現地の職人が作る。貧困層にも買えるよう、タンクは1基3000タカ(1タカは約1円)に抑えた。3000円で安全な水が得られて、つらい水くみの労働から解放され、医療費の軽減にもなる。“一石三鳥”だ。

 「キーワードは持続可能性です。最初は40基売れ、次の年は50基売れてお金も返してもらいました。それでまたタンクが作れる。つまりちゃんと回っているわけです」

 40代後半で博士号を取得。東邦大学薬学部の客員教授も務める。日本とバングラデシュを行き来する日々。天水研究所の社長だが、給料はなし。生活は年金が支える。

 「何でそんなもうからないことをやるの、といわれる。困っている人がいたら何とかしたいと思うでしょう。洪水もバングラデシュも同じ。一番大事なのはヒューマンスピリットです」

 墨田区役所で雨水利用を推進してきたこともあって「雨水だけで生活したい」と、自宅に「天水タンク」を設置し、飲料水やトイレなどすべての水を雨水でまかなっている。

 ■大宮知信(おおみや・とものぶ) ノンフィクション・ライター。1948年、茨城県生まれ。中学卒業後、東京下町のネジ販売会社に集団就職。ギター流し、週刊誌編集者など二十数回の転職を繰り返し、現在に至る。政治、経済、社会問題など幅広い分野で執筆。『平山郁夫の真実』(新講社)など著書多数。

 

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