ナビット「のりかえ便利マップ」 地下鉄全駅を調べ売り込む

2013.10.09

 電車のどの車両に乗れば、ホームにあるエレベーターや目指す出口に近いかが一目で分かるナビット社の『のりかえ便利マップ』。同社は、これを最初に作り、現在、全国の駅の76%でポスターとして採用されている。その他、七つ折りの携帯版やスマートフォンのアプリも作り、iPhoneのCMにも登場している。

 この大ヒット商品は、同社の代表取締役・福井泰代さん自身の体験から生まれた。

 きっかけは18年前の夏。荷物を持ち赤ん坊をベビーカーに乗せた福井さんが、駅のホームを汗だくになりながらエスカレーターを探していた。だが、見当たらず、赤ん坊は暑さでぐったり。ようやく見つけたエスカレーターはホームの中央にあった。

 《なんだ、ここにあるとすぐにわかれば、大変な思いをしないですんだのに》

 こんな思いをしたことはないだろうか? 普通なら思っただけで終わるところを、福井さんは解決しようとした。浮かんだのは、「嫌だったらと思ったら そこにビジネスチャンスがあると思え」。子育てと同時に、趣味で始めた“発明”の講習会で学んだ言葉である。

 そこで、自宅に近い地下鉄千代田線から始め、営団地下鉄(当時)と都営地下鉄の駅を合わせ、なんと256駅(現在は274駅)の調査を始めた。周遊券を買い、駅に降りて写真に撮り、階段やエスカレーターの位置を確かめ、地図に描き込む。この繰り返し。

 「始めるまで、こんな大変だとは思わなかった」。子育てしながらの調査。途中、駅員には不信がられる。何度かやめようと思った。それでもやめなかったのは「途中でやめると、これまでの苦労がゼロ、なかったことになるから」。最後は根性で全駅を調べ上げた。半年、かかった。

 だが、調査以上に苦労したのは、売り込みだった。最初、本にしようと考え出版社に売り込んだが、手応えなし。その数は50社を超えた。「とにかく、世に出したい」という福井さんの熱意に、ついにアルバイト情報誌が半年の連載を決めた。

 次に、福井さんは営団地下鉄(当時)とJRに売り込みをかけた。「これはいずれまねされる。ならば、その前にスタンダードにしよう。人は見慣れたものがいいはずだから、駅に張ってもらえば、いつも目にすることになる」。そう考えたのだ。

 しかし、コネなし、経験なし、実績なしの一主婦。相手にもされず、やっとアポがとれても「特定の車両が混むので わざと作らない」と、けんもほろほろ。それでも諦めず通い続け、とうとう「すっぽんの福井」というあだ名がついたほど。

 2年後、銀座線に採用される。「分かりやすい地下鉄」に企業方針が変わることになり、その時、担当者の間に浮かんだのが「すっぽんの福井」の顔だったという。

 これがきっかけとなり、翌年にはJRにも採用され、やがて全国へ広まった。 (村上信夫)

 

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