これまでの自治体のタブー破る 松阪市の「明るい癒着」

★松阪市(2)

2013.11.07

 松阪から始発電車に乗って午前中から東京の企業回り、最終電車に飛び乗って深夜に松阪に戻る。杉山正樹さんの手帳にはこんなスケジュールがびっしり書き込まれている。

 杉山さんの肩書は松阪市まちづくり交流部、官民連携・観光推進統括マネージャーだ。

 「官民連携を推進するために東京の企業を回り、松阪市の企業の製造した商品を扱ってくださいとお願いに歩いているんです」

 たとえば、運輸会社に行って松阪市の鋼管材問屋が新規事業として展開することとなったバッテリー再生剤の活用をお願いしたり、芳香剤メーカーの商品の販路拡大のために大手百貨店やホテルへ行ってお願いしてきたり、といった具合だ。

 杉山さんとパートナーを組む政木達也さんは、企業連携誘致推進室の室長だ。

 「本来ならば地元の工業団地などに企業誘致を働きかけるのが役目ですが、製造業の空洞化もあって現実には簡単ではありません。任務をもっと大きくとらえて、製造業にかかわらず、小売りサービス業を松阪市へ誘致したり、地元企業の商品を売り込む中で幅広く東京の企業と人脈を構築していこうと考えています」(政木さん)

 この日2人は、航空会社を訪ね、松阪市が中部国際空港と高速船で結ばれている利便性を訴え、北海道や九州から航空便を利用してやってくる観光客の松阪への誘致を提案していた。

 「伊勢志摩を訪ねる『GS世代』がターゲットです。宿泊は伊勢志摩でも、せめてお昼に松阪牛を召し上がっていただき、松阪城址や本居宣長記念館に立ち寄り、木綿のシャツやバッグも買っていただけるようなルートをお願いしました」と、政木さんは言う。

 これまで、自治体は特定企業の利益のために動くということはタブーとされてきた。

 しかし山中光茂市長はあえて「明るい癒着」という言葉を使う。

 「平等にチャンスを提供することと、説明責任が果たせるならば、民間企業と積極的に連携していこうという方針です。平等性を守るという建前のもと、だから何もしないというのではなく、市民の利益のためには積極的に動こうということです。陰に隠れた癒着は断じていけませんが、説明責任を果たせる『明るい癒着』は大いにやろうと考えています」(山中市長)

 この市長の命を受けた、いわば「(株)松阪市の営業マン」こそ杉山さん、政木さんというわけだ。

 この連載『伸びる企業の法則』に、あえて企業ではない松阪市を取り上げた理由もここにある。

 「松阪に来る観光客は高級牛肉を求める方、本居宣長や三井高利に関心のある方、決して安くはない木綿製品を求める方、つまり主役はやはり『GS世代』です。こだわり商品、付加価値商品の販路拡大に松阪は市をあげて『GS世代』に狙いを定めています」

 杉山さん、政木さんはこう語り、次の企業との約束のため電車に乗り込んだ。

 ■西村晃 1956年生まれ。NHK、テレビ東京を経て、経済評論家。「GS世代攻略術」(PHPビジネス新書)、「ポスト・イット知的生産術」、「ルート16の法則」など著書多数。

 ■GS世代 可処分所得の高い「黄金の60代(ゴールデンシックスティーズ)」の略。グループサウンズ世代も意識したネーミング。

 

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