団塊世代の元銀行員、股旅物演歌で歌手デビュー

2013.11.15

 子供の頃の夢は歌手−。だが、プロになれる人はほんのひと握り。普通は会社に就職し、たまに行きつけの飲み屋でマイクを握る程度で、夢は諦める。元銀行員の南条(本名・鈴木)忠夫さん(64)は諦めず、60代でCDデビューを果たした。

 千葉県横芝光町出身。地元の千葉興業銀行に25年勤め、「窓口業務から外回りまで、銀行の仕事は一通りやった」が、バブル崩壊前、経営悪化でリストラの憂き目に。退職後、自宅で畑仕事をしながら好きな歌に専念。これまでNHKのど自慢に2回出場し、2回とも合格の鐘を鳴らした。

 歌手デビューのきっかけは、作詞家・にしかずみさんとの出会い。

 「中学校の同窓生だったのです。クラスが違うので言葉は交わさなかったのですが、同窓会で私の話が出たらしく、先生と同じクラスの人に紹介されてお付き合いが始まって」

 いまさらプロに…、という気持ちもあったが、同級生に背中を押されて決断。デビュー曲は「利根の佐太郎」(マイライフレコード)。小江戸と呼ばれる水郷・佐原(千葉県香取市)を舞台にしたご当地ソングで、作詞はにしかずみ、作曲は秋月智光。哀調を帯びた佐原囃子の笛の生音が印象的な股旅物演歌だ。

 カップリング曲の「ただ、会いたい〜母へ〜」にも特別な思い入れがある。生後2カ月で公園のベンチに置き去りにされた男性が、64歳になっても母を慕い続けているという新聞の記事に衝撃を受けたにしさんが詞を書き、作曲家の西つよし自身が歌った曲のカバーだ。南条さんは3年近く前に発表されたときから歌い続けていた。

 「(千葉の)銚子へ嫁に行った私の娘が3歳の子供を残して白血病で亡くなったのです。この歌を歌うと娘と孫の顔がダブって涙を流しそうになるんです。この間、あるカラオケ発表会で歌ったら、『感動しました』と涙を流しながら私のところへ来た人がいました」

 銀行員時代、外回りの営業や支店回りをして培った人脈が役に立っている。

 「CDを何枚送ってくれ、とか、今度こんなイベントがあるんだけどボランティアで歌ってくれないか、とか、毎日電話がかかってきます。すごくうれしいですね。いままで人のつながりを大事にしてきたのがよかったな、と感じます」

 20日で65歳になる。大手レコード会社からメジャーデビューできるかどうか、これからが正念場。カラオケで鍛えた歌のうまさは折り紙付き。年末恒例歌番組への出演も夢ではないだろう。

 ■大宮知信(おおみや・とものぶ) ノンフィクション・ライター。1948年、茨城県生まれ。中学卒業後、東京下町のネジ販売会社に集団就職。ギター流し、週刊誌編集者など二十数回の転職を繰り返し、現在に至る。政治、経済、社会問題など幅広い分野で執筆。『平山郁夫の真実』(新講社)など著書多数。

 

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