「大き過ぎて潰せない銀行」に中国工商銀加わる 中国大手行の不振は世界の危機

2013.11.20


世界的に重要な銀行と認められた中国工商銀行(ロイター)【拡大】

 20カ国・地域(G20)の中央銀行、監督当局で構成する金融安定化理事会(FSB)はこのほど、「大き過ぎて潰せない銀行」の年次リストに中国工商銀行(ICBC)を加えた。

 G−SIFIs(ジー・シフィーズ)と呼ばれる枠組みで、FSBは国際金融システムにとって重要なグローバルな金融機関28行を指定していた。同リストは毎年更新されることになっており、中国工商銀行が加わったことで、指定銀行は29行となった。この中には三菱UFJ、みずほ、三井住友の日本の3メガバンクも選ばれている。

 今回、従来の中国銀行に続き中国工商銀行がリストに加えられた背景は意味深長だ。工商銀行が電子メールで発信した発表文では、FSBが同行をG−SIFIsに指定した理由について、「資産規模が巨大であること、海外に進出していること、世界での人民元の使用を後押ししていることによるもの」と前向きに受け止めている。

 しかし、市場関係者の見方は異なる。

 「FSBは中国経済が減速する中、シャドーバンキング(影の金融)に代表される中国の金融システムの脆弱さに危機感を持っている。中国銀行に続き中国工商銀行をリストに加えたのはその表れで、中国の大手銀行の経営危機は世界の金融システムを脅かしかねないとシグナルを送ったようなものだ」

 国際決済銀行(BIS)の新たな自己資本比率規制では、グローバル展開の金融機関は、中核的自己資本比率を7%以上に引き上げなければならない。G−SIFIs指定の金融機関はさらに1〜2・5%の資本の上積みが求められる。

 今回のリストで、最大の2・5%の資本上積みを義務付けられたのは、JPモルガン・チェースとHSBCホールディングス。一方、これまで最大幅の上積みを求められていたドイツ銀行とシティ・グループは2%に引き下げられた。

 また、クレディ・アグリコルが1%から1・5%に引き上げられた半面、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンは1%に引き下げられた。邦銀では三菱UFJが1・5%、みずほ、三井住友が1・0%の上積みを義務付けられている。

 G−SIFIsの指定行が破綻すれば、世界の金融システムに致命的な打撃を与えかねない。そのため、破綻しないよう手厚い資本を積むことが求められる。また、破綻が現実味を帯びた場合の手立てとして、破綻シナリオを想定した市場からの退場計画の事前提出が義務付けられている。「秩序ある清算」と呼ばれるもので、米国では破綻した銀行の清算を規制当局に認める方向で議論が進められている。

 しかし、実際にはG−SIFIsに指定された金融機関を清算するのは容易ではない。破綻懸念が高まれば公的資金で救済してきたのがこれまでの実態だ。そこに中国の銀行がもう1つ加わることで、さらに事態は複雑化しかねない。グローバル化した金融市場のジレンマをみるようだ。

 ■森岡英樹(もりおか・ひでき) 1957年、福岡県出身。早大卒。経済紙記者、埼玉県芸術文化振興財団常務理事などを経て2004年4月、金融ジャーナリストとして独立。

 

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