ASJ・丸山雄平社長 挫折、破産…危機乗り越え ビジネスモデル新築

★アーキテクツ・スタジオ・ジャパン 丸山雄平社長(57)

2014.03.11


アーキテクツ・スタジオ・ジャパン 丸山雄平社長【拡大】

 ほかにはない自分らしい家を求める人たちと、練達の建築家とを結びつけ、技術力のある工務店に施工させ、規定のフィーをもらう。ありそうでなかったビジネスモデルで昨年暮れ、上場まで漕ぎ着けたアーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)の丸山社長。しかし、その人生50余年は、まさに波乱に富む。 (清丸惠三郎)

 ──ビジネスモデルを考えついた契機は

 「地元・福井の主に建材を扱う商社に入社し、大阪の支店に配属された。仕事は大手ゼネコンの現場へ外壁とかを売り込むことでした。そこで力を持っているのは所長で、私たちにとって絶対的存在。でも、その人が設計者の前ではペコペコする。この業界で一番力があるのが建築家なら、その人たちをネットワークする仕事をしようと考えついたのです」

 ──ASJの前に別の会社を設立していますが

 「建築家を束ねる一方で、自分らしさを表現する住宅を建てたい人を集めて相互に結びつけ、実際に建てる工務店をも組織化する…。この基本的ビジネスモデルは、最初に会社を設立したときから変わりません。ただ当初は仕組みが脆弱で、結局3年で挫折。私自身も自己破産し、親戚にも大変な迷惑をかけました」

 ──どう再起を

 「建築家の中に、この仕組みは社会的に意味があるからもう一度頑張れという方がいた。また、あるITべンチャーが応援してくれて、そこの一事業部門として再スタートすることになった。前回の轍を踏まないようきちんと仕組みづくりに取り組んだ結果、業容も着実に伸びました。ところがまた問題が勃発。ITベンチャーが資金難となり、自分の事業の存続も危うくなったのです。私の事業自体は順調でしたので、大口債権者が話し合って社長をやってくれとの要望があり、2007年に経営を担うことになったのです。母親は大反対でしたが」

 ──ユーザーをどう見つけたのですか

 「3万円で加入できるアカデミー会員という制度を作り、プランニングやコストなど建築家と何度でも無料で打ち合わせができるようにしました。遠方の建築家に来てもらっても交通費は無料。地方からこのサービスが広がった理由です」

 「ただ、スタートしたのが大阪。大阪のオバちゃんに3万円出してもらうのは至難の業。で、イベント会場に来ていただいた方は1万円でいいですよと。今年は全国で570回のイベントを予定しています。加えて福利厚生を目的として提携した企業や団体の会員も無料で登録できます。登録者は累計で3万人を超え、1万人がプランニングコースを利用し、すでに4000人が施工まで進んでいます」

 ──建築家の組織化は

 「当社は、イタリアの権威ある建築雑誌『カザベラ』を翻訳発行して登録建築家に無料配布するとともに、国内外の高名な建築家のセミナーを定期的に開いてます。群がることを嫌う建築家も応援する理由は増えていると思います。1日1人は新規に参加され、その数は2400人を超えて質量ともに日本一かと」

 ──最後は工務店ですが

 「素晴らしい設計でも施工が悪いとどうしようもないので、このテーマの確立が一番重要です。当社の理念に共感し参加された工務店には、まずスタジオという名の営業・情報拠点を造ってもらう。この投資額は住宅展示場より安く、リターンも十分可能。建築費や設計変更に伴う積算など時間をかけずに計算できるソフトを提供したり、施工技術を高めるための勉強会を行ったり。スタジオは旭川から石垣まで全国190カ所に展開しています」

 ──今後の見通しは

 「加盟工務店の今期受注ベースが約200億円。これを5年以内に500億円に持っていきたい。長期的にはアジア各国への進出も視野に入れています。ほかにはない、自分たち家族だけの家に住む感動は何ものにも変えがたく、支持者は広がっています」

 【鑑定士と顔のない依頼人

 「最近見た映画で最も鮮烈な印象を受けた」作品。監督は名匠ジュゼッペ・トルナトーレ。天才と呼ばれた古美術品鑑定士が、若い女性から鑑定を依頼される。彼女は決して顔を見せない。鑑定士は彼女に魅せられた末に、長年かけて収集した美術品をすべて詐取されてしまう。

 「人生というのはうまくいかないものだよなと。自己破産のことなど振り返りつつ、つくづく思いました」

 【安藤忠雄

 「設計契約という、建築家にとり最も重要かつ神聖な儀式を締結する前に、会員になったお客さまには無料で基本設計を何回でも提供する」のが同社のサービス。

 「このビジネスを立ち上げたときから、建築界の大物に『お前たちのやっていることは邪道だ』と言われないかと恐れていたのは事実です」

 なかでも安藤忠雄氏は影響力もあり、業界の最重鎮。2年前、その安藤氏から突然電話が。

 「『あんたが丸山さんか。どんな商売をしているのか、ちょっと来てくれ』と。ついに来るべきものが来たとかなりビビりました」

 すぐに飛んで行き、説明した。翌日、電話があり、「あれから考えた。応援しよう」。以来、講演会に出てもらうなど積極的に支援してもらっている。

 【

 母親の敏子さんは畏敬の対象。「とにかくしっかり者で、近所のお年寄りを土日を含め、月額1万円で昼夜2食提供するボランティア活動を田舎で行っています」

 誰かが連絡なしに欠席するとすぐ駆けつける。遠隔地にいる子供たちから、大いに感謝されているそうだ。母親の堅固な心ばえと実行力が氏にも遺伝しているのだろう。

 【故郷の味

 全国を回り、おいしいものを食べる機会は多い。「だけど冬の越前ガニ、それに若狭のサバの一本焼きに勝るものはない。それも地酒『黒龍』を飲みながらね」

 ■会社メモ 建築関連コンサルタント。本社・東京都港区。2002年10月創設。「自分らしい」「個性的な」住宅を求める人たちと、練達の建築家とを結びつけ、技術力のある工務店に施工させ、施工費と設計料から規定のフィーをもらう−。丸山社長の考案した独自のビジネスモデルを展開する。東証マザーズ上場。資本金3億7300万円超(14年1月末)。売上高13億4900万円(13年3月期)。従業員60人(同)。

 ■丸山雄平(まるやま・ゆうへい) 1956年、福井県鯖江市生まれ。57歳。81年、明治大学商学部卒業、建材商社の三谷商事入社。大阪で建材販売などを担当したのち独立。現在のASJと同様のビジネスモデルを追求するが破綻。その後、IT企業の一部門として再起を図っていたところ、経営者の背任事件が起き、持ち株を譲渡されて現社名に改称。2007年11月、社長に就任した。口舌は爽やかで説得力がある。安藤忠雄氏や隈研吾(くま・けんご)氏ら建築界での交友は幅広い。

 

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