高すぎる公的年金の運用利回り リスク資産への運用拡大はもろ刃の剣

2014.03.19


難題抱える厚労省【拡大】

 ようやく厚生労働省で公的年金の財政検証が始まった。6日に開催された社会保障審議会の専門委員会では、公的年金の運用利回りについてたたき台となる複数のシナリオが示され、6月を目途に意見集約される予定となっている。

 しかし、中心となる標準シナリオ(高成長のあと低成長に)の想定利回りは年4・2%と高い水準で、市場では早くもその実現性について疑問視する声が上がっている。

 「厚生労働省の事務方は大変苦労していたようですね」

 国会の厚生労働委員会関係者は、こう財政検証の舞台裏を打ち明ける。国民年金や厚生年金などの公的年金について、政府はその財政の健全性について5年ごとに検証し、運用利回りなどを改定することが義務付けられている。

 2014年度がその5年目にあたるのだが、「アベノミクスの進展を踏まえ経済環境の前提をどう置くか、厚生労働省は悩んだようだ」(先の厚労委関係者)と言う。日銀の異次元緩和を背景に株価が上昇しており、足下の公的年金の運用利回りも大きく改善しているが、この状況がどこまで続くのか、中長期の運用を基本とする公的年金へどう反映させるか難題だったというわけだ。

 公的年金の名目運用利回りは、名目長期金利(実質長期金利と物価上昇率)と分散投資効果の和で求められるが、財政検証の参考値とされる内閣府が1月20日に公表した「中長期の経済財政に関する試算」では、日銀の政策目標である2%の物価上昇率が継続し、名目成長率は3・6%と高い水準が見込まれていた。

 この試算をベースにすると公的年金の名目運用利回りは4%をかなり超える水準とならざるを得なかった。

 一方、5年前の前回(09年度)の財政検証では、名目運用利回りは4・1%、さらにその前の前々回(04年度)の財政検証では3・2%の名目運用利回りが設定されていた。しかし、実際の運用利回りは、06〜12年度で年平均1・5%と目標を大きく下回る結果となっている。

 今回の財政検証では高成長シナリオで6・0%、最も悲観的な低成長シナリオで3・0%の名目運用利回りが設定されているが、「低成長シナリオでさえ実現は容易なことではない」(先の厚労委関係者)というのが大勢の見方だ。

 裏を返せば、この高い運用利回りの設定は「100年安心」をうたった公的年金制度を維持するために必要な運用利回りを逆算して導き出した苦肉の策ともいえる。

 そして、この高い運用目標は、実際に公的年金の運用を担う年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のポートフォリオ(運用資産の構成)に影響を及ぼすことになる。

 GPIFの基本ポートフォリオについては、株式の運用割合が引き上げられるほか、有識者会議ではインフラファンドやプライベート・エクイティ(非公開株式)、不動産などリスク度の高い資産への投資を専門にする小規模な運用組織として「ベビーファンド」を創設する方向が示されている。

 公的年金のリスク資産への運用が拡大されるわけだが、それは同時に公的年金が市場の価格変動リスクにより大きくさらされることを意味する。

 もろ刃の剣となるだろう。

 ■森岡英樹(もりおか・ひでき) 1957年、福岡県出身。早大卒。経済紙記者、埼玉県芸術文化振興財団常務理事などを経て2004年4月、金融ジャーナリストとして独立。

 

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