クラウドワークス・吉田浩一郎社長 砕けた役者の夢、一転…ビジネスの世界で急成長

★クラウドワークス・吉田浩一郎社長(39)

2014.04.01


吉田浩一郎社長(撮影・寺河内美奈)【拡大】

 「上京して役者になる」と神戸から東京に向かった青年の新たな舞台はビジネスの世界だった。挫折と成功、試行錯誤を繰り返しながら、個人の新しい働き方を提示する会社「クラウドワークス」を立ち上げ、急成長を続けている。かつての夢とはかけ離れたかのように見える会社経営だが、実は、舞台演出の経験が生かされているという。 (中田達也)

 −−どんな会社ですか

 「企業がインターネットを通じて個人に仕事を発注できるクラウドソーシングサービスを提供しています。ソニーさんやヤマハさんなど大企業を含め約2万5000社が登録し、経済産業省や国土交通省など官公庁からも発注をいただいています。仕事はアプリ開発やデザイン、データ入力など約70種類で、毛筆の筆耕や運動会のカメラマンなどネット以外の仕事も増えています」

 −−発注する企業側のメリットは

 「『早い、安い、うまい』ですね。発注から最短15分でマッチングできますし、個人に直接頼むので、安いものでは従来の10分の1の価格で済みます。高いスキルを持った個人と契約できるので品質も高くなります」

 −−受注側の個人はどのぐらい稼げますか

 「トップクラスでは年間1000万円ぐらいです。70代でコンスタントに受注している人も多く、最高齢の登録者は85歳です。定年後に独学でプログラマーになった方もいらっしゃいます」

 −−新しい働き方として定着しますか

 「2015年に正社員の比率が50%を切るといわれており、民間主導で残り50%の働き方のインフラを整備する必要があります。当社は、正社員が利用する福利厚生をフリーランスや在宅の主婦も使える仕組みや、教育プログラム、スキルの認定制度を導入しています」

 −−今後の展開は

 「海外では製造業のR&D(研究開発)や商品の企画でも個人の力を活用するのがトレンドなので、正社員や派遣社員に続く第3の人材調達のあり方として使っていただきたいと考えています。グローバル展開や株式公開に向けた準備も進めています」

 −−学生時代は演劇青年だった

 「幼稚園のときにお遊戯で認められたり、朗読で小学校の代表になるなど、演じることを通じて認められることが多かったんです。そうしたなかで(劇作家・演出家の)寺山修司に傾倒し、いわゆるアングラ演劇にのめり込むようになりました」

 −−大学時代には劇団も設立したそうですね

 「実際の廃虚を舞台にした公演を開こうとしたのですが、直前に許可が取れていないことが分かり、公演中止になりました。返すべきお金も使い込まれ、200万円の借金が残りました。自分のやりたいことをやろうとして迷惑をかけたのでそこで演劇をやめました」

 −−その後、パイオニアの営業マンになり、トップの成績を上げたとか

 「学生のころから営業に向いているといわれていました。演劇ではやってもやっても認めてもらえなかったのが、営業で成績を上げるとみんながほめてくれました。人には向き不向きがあり、自分には分からないものだなと思いましたね」

 −−その後は展示会を運営する会社に

 「演劇ではどうやっても1000人集められなかったのが、この会社は展示会で毎回5万人集客していました。自分ができないことがそこに存在していた」

 −−IT関連企業、ドリコムの執行役員として上場を経験した後、独立しました

 「アジアに目を向けてベトナムでアパレル事業を展開したのですが、経験不足で行き詰まったうえ、国内事業でも、役員に主要顧客を連れて独立されてしまいました。その後、次のビジネスモデルを探すうちに出合ったのがクラウドソーシングでした」

 −−演劇の発想は経営にも役立ったそうですね

 「演劇は音楽や照明、舞台技術や脚本、演技など違うパーツを一つにする作業ですが、企業でも営業や開発、管理などの部門を俯瞰(ふかん)することは演劇を通して身につきました。社内でも一人一人のスタッフが全体をイメージできるように情報を開示したり、ほかの部署のやり取りも見ることができるように心がけています」

 【趣味】基本的に仕事以外の趣味はないという。「昔はスノーボードやサーフィンもやっていましたが、いまは強いていえばワインとゴルフぐらいです。やらないことを決めることで、経営にかけているんだという迫力につながると考えています」

 若いころに熱中していた演劇は、「いまも見に行くことはありますが、思考が引きずられて経営に影響しないように気をつけています。映画もあまり重い内容のものは見ません」。

 【最近の買い物】創業から2年以上、スーツを新調しなかった。「会社が軌道に乗るまでは持っているスーツで通そうという思いでした。しかし、最近、社内のプレゼンで『お尻に穴が開いています』と社員に言われ、さすがにまずいということでスーツを2着買いました。そのうち1着は(高級ブランド)ゼニアのオーダーメードです」

 【読書】「高校時代は宗教世界や哲学について読みあさり、谷崎潤一郎や倉橋由美子なども読んでいた」というが、現在読み返す本は「銀座まるかん」創業者で、高額納税者として知られた斎藤一人氏の『絶対成功する千回の法則』だけだという。

 「経営者本や自己啓発本の中でも群を抜いて楽で、気持ちがこもっていなくても笑顔でなくても、とにかく『幸せだなあ』と言えばいいという本です。人間はいま持っている幸せを忘れやすい。落ち込んだときに『幸せだなあ』と言うと気分が変わり、最悪失敗してもいいかという気持ちで臨めます」

 【座右の銘】《志ある者は事ついに成るなり》「後漢の光武帝の言葉だそうです。大学も東大や早慶でもなく、就職したのも起業家を多く輩出しているリクルートやサイバーエージェント、楽天でもない。特徴がないなかで、唯一誇れるものは、熱意や志、思いしかありません」

 【挫折をバネに】ビジネスパートナーに裏切られるなど挫折も経験した。「どれだけ手塩にかけても出て行くときは出て行く。いい転機になりました。変えられるのは自分の態度や行動だけ。人がどういう行動をとっても自分の責任と思うようにしています」

 【仕事の中でうれしい瞬間】「クラウドワークスを始めて、ユーザーの方や仕事に関わってくれる人の“ありがとう”をいただくことで、毎日が最高ですね」

 【会社メモ】2011年創業、本社・東京都渋谷区。日本最大級のクラウドソーシングサービスのサイトを運営する。12年3月にサービス開始、14年3月時点でサイトに投稿された案件予算総額は73億円突破、登録ユーザー数は約12万7000人。主な株主に伊藤忠商事グループ、電通グループ、サイバーエージェント、デジタルガレージグループなど。売上高、利益は非公表。

 ■吉田浩一郎(よしだ・こういちろう) 1974年11月、神戸市生まれ。東京学芸大卒業後、パイオニア、リードエグジビションジャパンなどを経て、ドリコム執行役員として東証マザーズに上場後、独立。2011年11月にクラウドワークスを創業、社長兼CEOを務める。

 

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