一休・森正文社長 成算なき脱サラの果て… 一発逆転人生を歩む

★高級ホテル・旅館、レストラン予約「一休」 森正文社長(52)

2014.04.08


森正文社長(撮影・野村成次)【拡大】

 高級ホテル・旅館のネット予約ビジネスからスタートし、厳選したレストランの予約にも手を広げる一休。創業者の森正文社長は日本生命保険という大樹の下を飛び出し、一時は友人たちから「自殺でもしかねない」と思われるほど追い込まれた時期もあったようだ。が、そこから一発逆転人生を歩む。それだけにと言うべきか、経営はネット系企業とは思えぬ対面営業を重視するなど極めて地道である。 (清丸惠三郎)

 −−10年来、旅行業界は山あり谷ありですが、御社は着実に業績を伸ばしてきた

 「『一休.com』は、2000年5月にハイアットリージェンシー東京、ヒルトン東京など都内5つの高級ホテルのネット予約からスタートしたのですが、翌年1月に単月で黒字化して以来、東日本大震災のあった11年3月を除けば、すべて黒字。売り上げにあたる営業収益も、その11年3月期を含めて前年度対比プラスできています」

 −−利用者拡大のベースになる会員数も同様に伸びは順調です

 「会員数は、12年度第3四半期末で290万人だったものが、この1年で45万人以上増えました。30〜40歳代のキャリアとか、ダブルポケットと言われる比較的余裕のある層が、毎年着実に加入されている。加えて、高級ホテル・旅館に比べて単価が安く、気楽に使えるレストラン予約を06年にスタートさせたのですが、これが事業として成長期に入り、会員数はまだまだ伸びるとみています」

 −−順調そのものですが、創業時にはいろいろあったと聞きました

 「36歳まで日本生命にいたのですが、このままサラリーマンをしていたのじゃだめだなと思ったのです。しかし起業するにしても何もアイデアがない。辞めるとアイデアが出ると思って、自己資金3000万円余を持って会社を創ったのですが、何も浮かんでこない。表参道辺りで高級サンドイッチ店でもやろうかと考え、それには資金が1億円ほどいる。株式投資で増やしてやろうと空売りしたら、あっという間に2000万円ほどすってしまった」

 −−そこからすぐに現在のビジネスに行ったのですか

 「いや。ある人と話していて、オークションサイトを思いついたのです。アメリカにはイーベイがありましたが、当時、日本には同種のものはあまりありませんでした。最初は企業の在庫品などを扱うことを考えたのですが、思うように商品が集まらない。たまたま西新宿の高層ビル街を歩いていると、オフィスビルには煌々と明かりがついているのに、ほとんど電気がついていないビルがある。それがシティホテルだった。すでに楽天がオークションサイトを始めていて、何かに絞り込まないといけないと考えていたところでしたので『ホテルの空き室こそ究極の在庫だ』、これでいこうと」

 −−よくホテル側が協力してくれましたね

 「翌日、ハイアットリージェンシーに行ったところ、係の人がオークションならば高いスイートルームがいいだろうと言って協力してくれた。ホテル側としては15万円の部屋を空き室にしておくより、3万〜4万円でもいいから埋めたほうがいいという判断だったのでしょう。しかし、なかなか他のホテルは参加してくれなかった」

 「年が明けて別のホテルに行ったところ、『われわれは普通の部屋を売りたい。しかしブランドが毀損されるからビジネスホテルと一緒に売られると困る』という話が出たのです。そこで高級ホテル・旅館の予約だけに絞り込もうという方向が固まった。結果的に、それが当社の今日の成功に繋がりました」

 −−今後の一休の企業像を教えてください

 「ホテル・旅館の宿泊予約は、今後とも30〜40歳代の比較的余裕のある層を確実にとらえていきたい。対してレストラン予約は単価の関係もあって20歳代が中心になっており、スマートフォンと相性がいいことと、取扱施設数の増加もあって昨年あたりから利用者が急激に伸びています。ホテル・旅館のほうは成熟しつつあり、現在、売り上げベースでレストラン1に対してホテル・旅館7と大きな差がありますが、5年後には逆転するとみています。ただ宿泊予約にしても、20年のオリンピックや海外からの観光客の増加等もあり、成長余力はあると考えています」

 【現場へ行け

 社員に常日頃、言い聞かせている言葉という。

 「会社には商売のネタはない。取引先へ行って話しているうちに、レストランの人やホテルの人がぼやいた課題を親身になって解決してあげる。そうすることでうちも、取引先も、お客さまもウインウインの関係が作れるのだと口を酸っぱくして言っています」

 もちろん、森氏自身もホテルの総支配人やレストランの経営者と頻繁に会い、御用聞きに徹している。「ネット企業の経営者ですが、対面営業を重視している点で、決してネット系じゃないですね」

 【40人の出資者

 株で手持ち資金のほとんどを失ったあと、ネットオークションで再起を期す森氏に出資金100万円を払い込んでくれた友人知人が40人いた。

 「断られないだろうと思った人たちばかり」と笑い飛ばすが、氏にそれだけの人を動かす魅力があったのだろう。

 「大金持ちにするからとか何とか、すごく挑発的に話をしました」と語るが、「多くは自殺でもされたら大変というのが本音だったと後で聞かされました」。森氏の言葉通りその100万円は数十倍になり、毎年、配当もあるというから面白い。

 【森和夫

 即席麺の「マルちゃん赤いきつねと緑のたぬき」で知られる東洋水産の創業者(故人)。森氏は学生時代、アルバイト先の米ロサンゼルスの同社工場で、その謦咳(けいがい)に接する。

 「大変社員に気を使われる人でした。隔週、週末を利用して視察に来られるのですが、そのたびに社員にネクタイとか何かを土産に持ってこられる」。その森和夫氏の言葉を今も大事にしている。「経営者は挑戦を恐れるな。命も財産もなくすつもりでやらないといけない」

 【息抜き

 「下手なゴルフと息子とのキャッチボールかな。後はマッサージに行くくらい。本当におじさんをしています」。「奥さんとは?」と聞くと、「食事にでも行こうと誘っても、一人で行ってきたら、と断られることが多い」と笑う。仲のいい証拠だろう。

 【会社メモ】 高級ホテル・旅館、厳選したレストランに特化した予約サイト「一休.com」「一休.comレストラン」などを展開するIT企業。本社・東京都港区。1998年7月設立。今夏からパリやハワイなど海外の高級ホテル・リゾートの日本語予約サイトをスタートさせる予定。社名は母親の飼っていた犬の名前から。「ホテルでちょっと一休みの意味も持たせた」という。会員数は335万4000人。取扱宿泊施設数2366。資本金9億900万円。社員数136人(いずれも2013年12月末)。営業収益48億4700万円(同年3月期)。

 ■森正文(もり・まさぶみ) 1962年、東京都生まれ。52歳。86年、上智大学法学部卒業と同時に日本生命保険に入社。ニューヨークの投資顧問会社への派遣、融資・審査部門等を経験したのち、98年、退社。同年7月に一休の前身プライムリンクを起業し、代表取締役に。2000年に宿泊予約サイト「一休.com」を立ち上げ、成長軌道に乗る。拡大至上主義者の多いネット企業経営者には珍しく、経営は泥臭く、堅実。順調な収益の伸びもあって、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長から「日本でもっとも楽な社長の一人」と言われたこともある。

 

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