万葉倶楽部・高橋弘会長 写真DPEチェーンを築き、温浴事業へと大胆な転換

★万葉倶楽部 高橋弘会長(78)

2014.05.13


横浜みなとみらい万葉倶楽部の「展望足湯庭園」で(大里直也撮影) 【拡大】

 一介のアルバイトカメラマンから、写真DPEチェーンを立ち上げて上場会社にまで育て上げる。だが、デジタルカメラ時代の到来を予見し、温浴施設へと事業の軸足の大胆な転換を図り、いまやリゾートホテルを含め、全国14施設にまで拡大。しかし競争激化と見るや、ここにきて新たなビジネスの立ち上げを目指す。万葉倶楽部グループ創業者、高橋弘会長の挑戦は止むことはない。(清丸惠三郎)

 −−高橋さんは、1960年に独立系の写真DPEチェーンである日本ジャンボーを設立し、97年には温浴施設「万葉の湯」を始めました

 「私は熱海の酒屋の長男として生まれ、高校時代は写真部だったものですから、卒業後は家業を手伝いながらアルバイトで撮影など写真関係の仕事を手がけたのです。2つの商売を比較してみたところ粗利益率が断然違う。そこで写真を本業にし、海外メーカーのフィルム中心に扱うDPEチェーンをつくり、最終的には上場まで持っていったのです」

 −−しかし、カメラのデジタル化を早くに予想、温浴施設に軸足を移しました

 「90年代半ば、メーンバンクの幹部の方と話していたとき、『デジタル化は案外と早く進みますよ』とアドバイスされたのです。調べてみると、事実そうなりそうだった。銀塩フィルムの写真は『これまでだな』と見極め、次に何をやるか考え、目をつけたのが勃興期にあった日帰りの温浴施設でした」

 −−ただ、高橋さんは他と一味違う温浴施設で参入し、注目を浴びます

 「私は何をやる場合でも、(世間一般とは)違う考え、違う立場からものを見、考えることにしています。逆転の発想といいますか。当時、温浴施設は、健康ランドを先駆けにスーパー銭湯などが次々と誕生し始めていました。同じことをやっていては埋没する、より高級な温浴施設にしようと考えたのです。そこで熱海や湯河原の高級旅館並みのたたずまいともてなしを提供する施設を造り、お風呂も名湯・湯河原の源泉を運び込み、都心で本物の温泉の雰囲気を楽しめるビジネスモデルを創案したわけです」

 −−温泉権入手は結構難しいと聞きますが

 「構想がまとまりかけたところで、すぐさま手を打ちました。たまたま温泉旅館が不況で廃業するところが多い時期と重なり、割合スムーズに温泉権は確保できましたね。何十年もかかって地中に浸み込んだ水が、地熱によって温められたのが温泉。ミネラルをたっぷり含んでおり、水道水を沸かしただけのお湯とは全く違う。だからお客さまも満足してくれているのだと思います」

 −−温浴施設に加え、その後、旅館・ホテルを相次いで買収しました

 「万葉の湯は日帰り入浴施設としてスタートしましたが、お客さまから宿泊もできるようにしてくれと強い要望があり、宿泊設備を付加したのです。温泉旅館・ホテルは、経営不振に陥った地元の老舗高級旅館から何とかしてくれと頼まれたりしたことからグループの傘下に入れ、逆に日帰りサービスを加えたりして稼働率を上げ、経営効率化を図っています」

 −−温浴施設は競争が激化していますし、温泉旅館はまだ完全復活とはなっていませんが

 「万葉の湯は他の温浴施設と異なり、既存施設も前年対比で売り上げがプラスに推移しています。しかしロケーションなどがいい物件があれば別ですが、当面は増やす気はありません。旅館・ホテルも、老舗で高級であればあるほど耐震設備等を含め、リニューアルに費用がかさみますので、とりあえず一休みですね」

 −−とすると、今後の万葉倶楽部グループの発展の方向性は

 「私は世の中の不合理に挑戦しようとする気持ちを持ち続けています。多くの人に幸福をもたらすことができるので、そこにビジネスチャンスが生まれると考えているからです。次のビジネスですが、具体的なことはまだ言えませんが、今どきの言葉を使えば『終活』に関わるもの。すでに相当調査しており、20〜30年後には、多くの人から『高橋はいいことをしてくれた』といわれるとともに、ビジネスとしても大きなものになると考えています」

 【ソーラー発電】

 この4月、鹿児島県阿久根市で子会社がソーラー発電を開始した。高橋さんは「日帰りの神風出張」で視察に。「売電価額が決まっているということは、売り上げが決まっているということ。こうしたビジネスに手を出さないのはおかしい」と語る。

 同県内では、5月にもう1カ所設備が稼働、約1000軒分の需要をまかなうことになる。ただ、「高い売電価額を負担するのが国民という点には矛盾を感じる」とか。とはいえ「原子力発電のコストは、廃炉費用等まで考えると莫大。自然エネルギーを育成していく努力は必要です」と語る口調は強い。

 ソーラー発電については、さらに投資をいとわないつもりだという。

 【人生における幸運】

 「私は終戦の年、小学校4年生になったばかり。7〜8年も早く生まれていたら、兵隊に志願して戦死していたかもしれない。写真の仕事から温浴の仕事にうまくチェンジできてラッキーだったといわれますが、何が一番ラッキーだったかといえば、前の世代の人と違い、物心ついてからずっと平和が続いてきたことですよ」

 【震災支援】

 東日本大震災のとき、温泉を運ぶ大型タンクローリーを所有することから、宮城県大崎市の市長に話をして鬼首温泉(宮城)の源泉を東松島市(同)に運び込み、被災者の救援活動にあたった。

 「自衛隊は食事の用意で手いっぱい。お風呂までとても用意できない。そういうことで多くの人に感謝されました。50日間のわれわれの活動が終わって引き揚げるときには、地元の人はもちろん自衛隊員全員が敬礼で見送ってくれたほどです」

 【登山】

 20代前半は登山に明け暮れた。「年に60日は山に入っていた。日本の山岳史に残るような記録も持っています」と語る。

 数日、雪の絶壁にビバーク(緊急野営)したような経験もある。「ああいう経験を思い出すと、何も怖いものがなくなる。私の商売におけるガッツというのは、そういう経験で養われたようにも思います」

 ■会社メモ 「万葉の湯」を展開する温浴・宿泊企業。本社・神奈川県小田原市。1997年、高橋氏が創業した独立系写真現像所チェーン、日本ジャンボーの100%子会社として設立。湯河原、由布院などの源泉を都市部に運び込む形での温浴施設という特徴が他の施設と一線を画し、評判を呼ぶ。現在、東京、横浜など全国9カ所に展開。ほかにサンミ倶楽部(熱海)、天成園(箱根湯本)などリゾートホテル5館を傘下に持ち、関連会社として日本ジャンボーなどがある。資本金3000万円。グループ売上高213億円(2013年度)。グループ従業員3200人(嘱託・パート含む。13年度末)。

 ■高橋弘(たかはし・ひろし) 万葉倶楽部会長で、同グループの創業者。1935年、静岡県熱海市生まれ。78歳。三島南高を卒業後、家業(酒店)に従事するかたわら、写真関係の仕事を始め、58年にアルプス写真(現・日本ジャンボー)を創業、上場企業に育てる(現在は上場廃止)。97年、銀塩フィルム写真の衰退を予想し、万葉倶楽部を創業。「万葉の湯」チェーンを全国に展開し、その後、伊豆長岡の有名旅館「八景園」などを傘下に入れる。最近では鹿児島県でソーラー発電に乗り出すなど起業家精神は衰えをみせない。ホームページ上のビデオブログにはファンが多い。

 

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