会社員時代から創作活動続け独自の技法で描く“異能の画家”

2014.05.16


東京・銀座にギャラリーを開設している織田さん【拡大】

 「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがあるが、織田泰児(たいじ)さん(70)はサラリーマン時代、仕事と創作という二兎を追う生活を続けてきた。

 東大法学部卒の画家。在学中は美術サークルに所属し、ひたすら絵を描くことに情熱を傾け、法律の授業は「こんなつまらんものはないな」と思ったというから、あまり勉強熱心な学生ではなかったようだ。友人の多くは官僚になったが、織田さんは「食うことを確保する」ため第一生命保険に入社。企業に対する融資業務を担当していた。

 「人生は2つぐらい生きられるだろう」と会社員と“週末画家”を続けた。2002年に役職がなくなり、給料もダウンする「職定年」になったのを機に、58歳で退職。弟が経営する不動産会社の仕事を手伝いながら、本格的な創作活動に入った。

 「誰もやっていないことをやりたい」と思って、まったく筆を使わず絵の具を垂らして流す技法で絵を描く。部分と全体は相似形という数学のフラクタル理論に基づくもので、織田さんが独自に考案した。

 「あるとき川崎市の工場街へ絵を描きに行ったら、塗料が飛び散った板が転がっていてね。それがすごく新鮮に見えたのです。これはポロックだな、と突然ビビビッときて」

 ポロックは米国の抽象表現主義の画家で、床の上に広げたキャンバスに絵の具を垂らす「ドリッピング」の手法で知られる。出発はポロックだが、織田さんは日本的なアートにしようと工夫を重ね、絵の具を垂らしたり流したりして山や川、海などの具象的な風景、あるいは抽象的な作品に仕上げる。「一番より唯一、有能より異能と言われる人間になること」がモットーなのだ。

 銀座1丁目の古風なビルにアートスペース「銀座ワン」を開いて17年。3・5坪の広さで1週間の賃料は9万円。「毎月、いろいろな画家の展覧会をやっています。『赤字にしないでください』と女房に言われているけど、ずっと赤字です」と頭をかく。

 最近は丸めた新聞紙を使って描く新たな手法に挑戦している。「誰もやっていない」独自の画風を確立したという意味では、間違いなく「異能」の画家。サラリーマンを引退した後の「2つ目」の人生も快調だ。

 ■大宮知信(おおみや・とものぶ) ノンフィクション・ライター。1948年、茨城県生まれ。中学卒業後、東京下町のネジ販売会社に集団就職。ギター流し、週刊誌編集者など二十数回の転職を繰り返し、現在に至る。政治、経済、社会問題など幅広い分野で執筆。新著「死ぬのにいくらかかるか!」(祥伝社)など著書多数。

 

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