消費増税はデフレ加速 需要不振で企業の利益減少

2014.05.23


勤労者月収と物価【拡大】

 民主党政権時代の2011年6月、消費税増税案を作成した与謝野馨経済財政担当相(当時)に会って、拙論が「デフレ下での消費税増税は避けるべきではないか」と反対論をぶったとき、与謝野氏の脇にいた官僚氏が「消費増税すると物価が上がりますからね」とニタッと笑った。そんな経済に無知な官僚が裏で増税でメディアを篭絡(ろうらく)し、政治家たちを懐柔する。

 「無知」と言ったのは、物価上昇=脱デフレという短絡思考のことである。「雇用・利子および貨幣の一般理論」(1936年)を著したJ・Mケインズはデフレについて、「物価下落が続くという予想」と論じたばかりでなく、「(デフレは)労働と企業にとって貧困化を意味する。雇用にとっては災厄になる」と考察している。つまり、デフレかどうかは物価と雇用の両面から判定するべきだと説いている。

 学生時代の官僚を教えた経済学教授たちはケインズを読んでいないようだ。

 最近、東大などの経済学教授2人が日本経済新聞の経済教室欄で相次いで、企業が消費増税の機会を利用して消費税増税分以上に値上げするケースが目立つのを評価し、「デフレ脱却の契機を与えているという解釈も可能かもしれない」とうそぶいている。

 拙論は日本の慢性デフレというものを、「物価下落をはるかにしのぐ速度で勤労世代の給与が下がっている状態」とかなり前から定義してきた。

 グラフはそれを裏付ける。1997年度の消費増税で消費者物価は上昇したあと、98年末からじわじわと下がり続けてきたのが、2007年にいったん下げ止まった。そして08年のリーマン・ショック以降、再び下落していたのが、「アベノミクス」が始まった13年に上昇に転じた。

 13年の物価水準は97年に比べて3%弱の下落幅にとどまる。だが、これでも「デフレ」は続いている。勤労者月収は97年には48・7万円だったのに13年は14・6%減の41・6万円だ。

 今年はよくなるのか。物価上昇率を名目賃金から差し引いた実質賃金はこの1〜3月期、前年同期比マイナス1・8%と下降が続く。春闘によるベアも大企業ですら1%に満たないし、消費増税分を加えた物価上昇率は日銀政策委員会見通しで今年度3・3%に上る。

 物価の大幅な上昇の半面で所得がわずかしか上がらない家計が消費に回せるカネは減る。家計がそれを実感し出すと、企業は需要減に直面し、価格を下げるようになる。値下げしてもいったん減った市場シェアを回復できず、利益減の割合は値下げ率をはるかに上回る。企業はそこで賃金や雇用を減らすようになる。

 これが、97年度の消費増税から1年以上経ったあとから始まった日本の慢性デフレの実相である。需要が弱い環境下での値上げは官僚や教授たちが言うように、脱デフレの契機になりうるのではなく、その逆で、デフレを加速させるきっかけになりうるのである。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

 

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