高齢社・上田研二最高顧問 高齢者に働く場の確保と生きがいを提供

★高齢社 上田研二最高顧問(76)

2014.07.15


上田研二最高顧問(撮影・矢島康弘)【拡大】

 少子高齢化が急速に進行する中、労働力の確保、社会保険制度の維持、シニア世代の収入確保や生きがいなどを見据えたとき、彼らの働く場の確保と生きがい提供は喫緊の社会的課題である。そのテーマに1990年代に着目、高齢者の立場から解決しようと、60歳代で起業したサラリーマン経営者がいた。それが上田研二氏だ。 (文・清丸惠三郎)

 ──そのものズバリ、高齢者に顔を向けた会社ですが、設立の契機は

 「1997年ごろ、私が東京ガスの協力会社を再建すべく社長に就任した前後ですが、急激な高齢化が始まるとの予測が相次いでいた。一方で若者人口が激減し、労働力不足の穴を埋めるにはシニア世代にも働いてもらわないといけないのは自明の理でした。しかもこの世代は技術もあり、経験も豊富。改めて教育や訓練をする必要もない。調べてみると、多くは年金受給者で、お金以上にコミュニケーションの場を求めていた。そこで従来の人事システムによらず、一人でも多くの高齢者に『働く場』と『生きがい』を提供することを目的に会社を立ち上げようと考えたわけです」

 ──すんなりと設立できましたか

 「東ガス本体の副社長に高齢者のための会社設立を訴えたところ、『趣旨はよく分かったので会社は設立していいが、社長は他の者を』と。そこで私が最大出資者となり、2000年1月に仲間6人とこの会社を設立。社長はかつての部下にやってもらうことにしました」

 「その際いくつかこだわった点があります。第1に社名。これは高齢社とする。第2は前述のように、企業目的は働く意欲のある高齢者に働く場と生きがいを提供すること。そして第3は待遇ほかですが、登録社員の入社資格年齢は60歳以上75歳未満で、一度採用されれば気力・体力・知力がある限り定年はない。勤務は業務のあるときだけの不規則勤務で出来高払い、といったことです」

 ──具体的にはどういう仕事を

 「最初は東京ガスおよび給湯器メーカー関係の、例えば新築マンションのガス給湯器の点火試験やガス機器の点検・修理等の仕事が多かった。その後、今の都市再生機構のガス機器点検などが入ってきましたが、3年目になると仕事量が伸び悩み始めた。たまたまそのころ、取り組んでいた企業再建も軌道に乗り、高齢社の経営に専念するようになったのです」

 「私はもともと営業畑だったから、社長になるや先頭に立って営業活動を行い、シニア向けの仕事を開発していった。一方で東京ガスやOB会に働きかけて登録社員の数も増やしていきました。ただ、今は仕事も登録者も東ガス関係が半分にまで下がってきています。また当初は請負形態でしたが、02年には人材派遣業に進出し、その後、有料職業紹介事業分野にも手を広げています」

 ──「かじワン」という女性対象のビジネスも始めました

 「女性登録者が増えてきていましたが、仕事がなかなかない。そこで仕事そのものを創る必要があるということで始めました。具体的には家事代行・支援、介護サポート、子供の世話など。今後、高齢女性の貧困が大きな社会問題になると思われ、解決の一助にとスタートしましたが、仕事量確保などまだまだ努力が必要ですね」

 ──労働力需給が逼迫してきて、高齢社も成長の大きなチャンスです

 「確かにこうした仕事ができないか、ああいう仕事はどうかと、話が舞い込んできています。しかしうちの場合、ほとんどの人が基本、週3日労働。余裕を持って働きたいということからです。同様に深夜や早朝、立ち仕事などは高齢のため人選に苦労するし、簡単に派遣するつもりはありません。当グループは売り上げ・利益にとどまらない企業価値を求め、小さいが常にキラリと光り輝く会社であることを目的としています」

 【企業再建】

 東京ガス子会社のガスターに移って6年目に協力企業・東京器工の再建社長に。「社員120人ほどの会社で、借入金約12億円、累積赤字約6億円。もう潰したらという声が圧倒的で、社長のなり手がいなかった。ならば私が行きます、と」

 就任に当たり、「進駐軍で来たがたくさん人は連れてこない。リストラはしない。ただし降格人事は行う。業務は首都圏に集中する」と4つの約束をした。

 元来、「社員の首を切って業績を上げた人が、名経営者と呼ばれるのはおかしい」と考えていた。東ガス関係会社に一部人員を引き取ってもらったが、人員整理はなし。社員の信頼を得て数年で再建した。

 【人は財産、人は宝】

 「人本主義経営」を標榜する。長年のビジネスマン生活で「株主第一、利益至上主義の経営に疑問を抱くようになった」と語る。「やはり会社は社員第一主義で、みなが生き生きと働けることが大事」。東京器工の再建で「人は財産、人は宝」と改めて痛感したという。

 【3台の冷蔵庫】

 本社事務所に大小の冷蔵庫3台が据えられ、中はビールとつまみの乾きものでいっぱい。来客や、やってきた登録社員などに午後4時を過ぎると供される。上田氏のビール好きからきているが、「高齢社が人間らしい会社であり、クライアントや登録社員に愛される会社でありたい」という思いが、伝わってくる。

 【マージャン】

 三度の飯より好きだという。「同僚とやり、知人、友人とやり、若いときから年がら年中やっていた。カモにした人も随分います」。しかしパーキンソン病を患い、「昨年4月以来、やめている」そうだ。

 【鮮魚】

 「何といっても獲れたての魚。子供のころ、貧乏人の子沢山の家で育ったから、八幡浜の沖へ出てタコやサザエなど自分で獲ってきたものです」

 会社メモ 高齢者に特化した人材派遣、有料職業紹介、各種請負業務などが主力事業。2000年、上田氏が中心になって設立。本社・東京都千代田区。関係会社では高齢女性のための家事代行・支援、介護サポート業務も行う。上田氏は「就労する人が生き生きと働ける人間中心の人間味あふれる会社」を理想とし、ダイバーシティー経営を実践。事業ノウハウを全国の同業者、起業希望者に伝授もしている。資本金1000万円。年商5億2100万円。従業員37人(グループ計3社)、登録社員数830人(14年3月期)。

 ■上田研二(うえだ・けんじ) 1938年、愛媛県八幡浜市生まれ。76歳。高校卒業後の56年、東京ガスに検針員として入社。内勤に転じ、理事にまで昇進。90年、赤字だった子会社のガス機器メーカー、ガスターに移る。専務・営業本部長として黒字化に尽力。96年、債務超過に陥った関連会社、東京器工の社長となり、再建させた。「取引先・銀行の信用を得るとともに社員の心をつかむことが再建の近道」と語る。2003年、高齢社社長に。病の身を奮い立たせ、「人間味あふれる企業づくり」を目指す。7月1日から現職。

 

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