職員総出の手作り水槽にドラマ 北海道・北見「北の大地の水族館」

2014.07.23


北海道・北見「北の大地の水族館」【拡大】

 2012年夏にリニューアルした「北の大地の水族館(施設名・山の水族館)」(北海道北見市)が、夏休みを迎えて盛り上がっている。

 「山の水族館」は昭和53(1978)年、留辺蘂(るべしべ)町(当時)が「北海道の淡水魚を収集」「熱帯魚も扱う温泉水族館」として開館した。しかし、冬期間は気候が厳しく客足が落ち込むため休館。水族館のそばにある温根湯(おんねゆ)温泉も賑わいがなく、ホテルや店の廃業も相次ぎ、シャッター通りとなっていた。

 リニューアルにあたって、北見市教育委員会留辺蘂教育事務所長・若杉鉄夫さんは断られるのを覚悟で、新江ノ島水族館などを成功させた水族館プロデューサーの中村元さんに「500平方メートルの小さな水族館で建築予算は2億5000万円しかないが」とメールした。

 この依頼を受けて中村さんは悩んだという。「失敗した時のリスクが大きい」からだ。「予算はない、不便な立地(札幌から車で5時間)、そして、“川の水族館”とマイナス要因があまりに多かった。が、「疲弊した温根湯温泉街の地域再生に貢献できれば、金がなくても出来ることはある」と引き受けた。

 川の水族館が失敗する要因は、まず淡水魚が地味であること。そして、川感を演出するため岩や木を飾り付けるが、そのため「まるでジオラマのように感じる」のだ。

 中村さんは、水の存在感、水中感を「水塊(すいかい)」と表現しそれにこだわる。子供が5割の動物園に対し、水族館は8割が大人。その多くは「××科の××」という魚を見るために来るのではない。「涼しそう」「気持ちいい」など水の中に浮いているような“癒やし感覚”を求めている。それを感じさせるのが「水塊」なのだ。

 「実は、川にも滝や流れなど海とは違う水塊を感じさせる要素がある」(中村さん)。それが日本初の「滝つぼを下から見る水槽」になった。その他の水槽もなるべく岩などを減らし、水の存在を見せるようにした。

 中村さんは「全ての水槽にドラマが必要」だという。北見は北海道で最も寒い場所の一つでマイナス20度にもなる。しかし、凍りついた川面の下では、真冬でもたくましく魚たちは生きている。その様子は感動的でもあり、世界初「冬に凍る川の水槽」となった。

 予算がないからその水槽は、職員総出の手作りである。「イトウの大水槽」は造林業者に協力してもらい、白樺の原木を山から引き抜いてきた。まさに町挙げての手作り水族館となった。

 東京のメディアが動けば、地元が注目すると情報発信。NHKの全国放送がきっかけとなって地元メディアも注目、さらに市民が改めて評価した。リニューアル前の最終年入館者1万9223人に対し、リニューアル後、初年度30万人、そして、2013年5月7日には、累計50万人を超える大ヒットとなった。

 だが、中村さんは「まだまだ地域(温根湯温泉街)おこしまで転嫁できていない」と、次の仕掛けを考えている。 (村上信夫)

 

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