チョーヤ梅酒 金銅重弘社長 目標は梅酒という言葉を日本人が忘れる日

★チョーヤ梅酒・金銅重弘社長(60)

2014.08.26


チョーヤ梅酒・金銅重弘社長(撮影・岡本義彦)【拡大】

 「梅酒と言えばチョーヤ」−。そのチョーヤ梅酒の4代目社長、金銅重弘氏。同社は梅酒がまだ家庭で造られていた時代から市場開発に取り組み、現在シェア35%のトップ企業で、輸出にも力を入れている。しかし、金銅社長は「日本人が梅酒という言葉を忘れる日を目指したい」と異なことを口にする。そこには伝統の製法・素材にこだわる“合成品”への強い憤りとブランド強化への熱い思いが垣間見える。 (清丸惠三郎)

 ──拡大を続けてきた梅酒市場ですが、踊り場に差し掛かっています

 「2004年に全国の出荷量が2000万リットル。それが12年には3900万リットルとほぼ倍増しましたが、ここへきて伸び悩んでいます。そうした状況下で競争は一段と厳しくなった。20年前にメーカーは30社ほどしかなかったのですが、梅酒が有望というので大手酒類メーカー、日本酒メーカーが続々と参入し、今や300社を超える。その結果、価格競争が起きて単価が下がり、私どもも懸命な経営努力が必要になっています」

 ──原材料を変えようがないので、価格競争にも限度があるのでは

 「そうでないところが大問題です。梅酒と言えば家庭で造るのと同じで梅、砂糖、それにホワイトリカーが原料と思われるかもしれない。弊社の場合は、そうした天然素材のみで製造しています。ところが、大容量で低価格の紙パック製品などがそうですが、酸味料の合成クエン酸を中心に香料、着色料、梅のエキスを少し混ぜて『国産梅100%』の梅酒として売っている。本来の梅酒だと原価の70%強が梅。その梅をほとんど使わないのだから、いくらでも安く製造できるのです」

 ──日本酒の消費が落ちた主因とされる醸造用アルコールを混ぜた「三増酒」と同じパターンです

 「それよりはるかにひどい。三増酒でも3分の1は本来の日本酒。梅酒の場合、梅がほとんど使われなくても梅酒とうたえる。国税庁に一定量以下しか用いていないものは『合成梅酒』など別の名称にすべきだと訴えましたが、『業界内で話し合ってくれ』と動いてもらえていません」

 ──この状況をシェアトップとしてどのように打開するつもりですか

 「社内で言っているのは、日本人が梅酒という言葉を忘れる日を目指そうということ。『そんなこと言ったらダメですよ』と叱られるのですが、いま店頭で『梅酒ください』と言うと、本来の梅酒ではないものをお客さまは手にする。だとすれば、弊社は本来の素材で正統な製造法で梅酒を造ってきたわけだから、今後は『チョーヤをください』と言ってもらえるようにしたい。現に東南アジアや中国本土では、梅酒という言葉は通用せずにチョーヤで通っている」

 ──なぜ梅酒に進出したのですか

 「100年前、祖父が大阪・羽曳野でブドウ果実の栽培からワイン造りを始めました。しかし1950年代末、ボルドーに引退旅行したところ、品質、価格どれをとっても太刀打ちできないことに気づいた。世界で勝てるアルコール飲料は何かを考え、行き着いたのが梅酒でした。かつてみそも、しょうゆも家庭で造られたが、企業生産が中心になった。梅酒もいずれ企業生産が中心になるとみたのです。祖父の跡を受けた父、叔父が懸命に頑張ってきた結果が、今日のチョーヤにつながったのです」

 ──現在、売り上げが約100億円。これをどう伸ばしていきますか

 「数字的には5年後には現在の2倍にもっていきたい。梅酒に加えて、ノンアルコールの『酔わないウメッシュ』などを強化していく。梅酒はアルコールと砂糖により、種と実のエキスが引き出され、梅ジュースと成分がかなり異なります。この成分を残したままジュースのように飲めて健康的な飲料。今後この分野は伸びるとみています」

 ──海外にも力が入っています

 「私が最初に手がけた欧州市場は、組み立て直す必要がありますが、東南アジア、中国は年々伸びています。現在、海外売り上げは全体の22〜23%ですが、5年で全体の半分ぐらいにしたい。高い目標ですが、実現したいと思っています」

 【石門心学】

 江戸期に活躍した実践哲学者、石田梅岩。その結社である心学明誠舎が変遷を経て、1955年に大阪で再建、今日も活発な活動を続けている。

 自ら「できのいい会員ではない」と謙遜しつつも、会に積極的に参加している。最近も「梅岩の代表的著作『都鄙問答(とひもんどう)』を読み直し、得るところが多かった」と語る。

 特に「物事をありのままに素直に受け取り、素直に見ることの大切さを痛感しました。(経営判断などをする際に)私自身の戒めにしており、社員にもまたそうあってほしいと考え、機会あるごとに話しています」。

 【お酒】

 「酒は海外で市場開発に当たっているうちに、お付き合い程度に飲めるようになりました」という。好きなのは「本当は梅酒と言わないといけないんでしょうけど、実は日本酒です」。

 その飲み方も独特で、「純米吟醸か純米大吟醸を、人肌程度のぬる燗にして飲む」のだそうだ。

 そういう注文をすると、冷酒が常識と思いこんでいる店の人が「えっ」という顔をするが、「これが一番」と譲る気配はない。

 【趣味】

 「特にないが、あえて言えば旅行」と語る。

 「年に1回程度、友人と一緒にフランスのワイナリーをはじめ、いろいろなところを見て回っています。友人はドイツに駐在していたころ知り合ったドイツ人やフランス人で、この夏もフランスのブルターニュ地方を旅する予定」とか。

 「気のおけない彼らと酒を酌み交わし、食事をし、さまざまな話をするほど楽しい時はないですね」と顔をほころばせる。

 【語学論】

 「英語は流暢ではないのですが、積極的に話すことにしています。大事なことは通じ合うこと。いかにコミュニケーションできるかということです」

 ■会社メモ 梅酒のパイオニア企業。本社・大阪府羽曳野市。1914年、故・金銅住太郎氏が個人で始めた事業が前身。蝶矢洋酒醸造を経て、2000年、現社名に。地元に蝶が多く、石器時代の矢じりが多数出土したことから「蝶矢」と名付けたという。1960年代、アルコール飲料、発酵食品の多くが、家庭での手作りから企業生産へ移行した歴史を踏まえ、国際競争に勝ち残れる分野として梅酒を選択。梅栽培に始まり、原料・生産にまで細かく目を配り、酸味料、着色料等すべて無添加を貫く。資本金2800万円、従業員数130人(2013年12月期)。

 ■金銅重弘(こんどう・しげひろ) 1954年大阪府生まれ。60歳。79年、和歌山大学経済学部卒業とともにシャープに入社。事務部門を経て、静岡県内で営業を経験。83年、父・和夫氏に請われて、祖父創業の蝶矢洋酒醸造(現・チョーヤ梅酒)に転じた。ヨーロッパを中心に海外市場開発に取り組む。96年、取締役海外事業部長に就任し、2007年から現職。市場開発で苦労したドイツ、フランスなど海外に知己が多い。老舗の4代目で態度、物腰は鷹揚だが、経営はアグレッシブだ。

 

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