公的年金の将来は安心か 楽観視できない3つの理由

2014.09.03


※厚生労働省「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況見通し−平成26年財政検証結果」をもとにフィデリティ退職・投資教育研究所作成。2044年度の所得代替率は厚生年金と共済年金が一元化(15年10月予定)したものとして算出。賃金上昇率は2・3%の想定。ただし人口構成などを考慮して算出結果は年率1・8%弱の拡大。年金支給額は年率1・1%弱の拡大【拡大】

 今年は5年に1度行われる年金の財政検証の年で、6月には厚生労働省が「財政検証結果」を社会保障審議会年金部会で発表した。それによると8つのケースに分けた試算結果から、所得代替率50%を下回るような緊急事態になっているとはいえない点が紹介された。もし、所得代替率が50%を切るようなら、そうならないための施策を政府は実施することが求められている。

 これでわれわれは公的年金の将来を安心してみていけるのだろうか。所得代替率は、「厚生年金の支給額」が「厚生年金の加入者の平均手取り」に対してどれくらいの水準になるかをみたものだ。50%ということは加入者の平均手取りの半分を厚生年金として支給されるということになる。

 ここで、疑問に思ってほしい点が3つある。まずは「加入者」の意味するところだ。図に記載した通り、加入者は現役の男子を念頭に置いている。すなわち分母は1人の金額だが、分子にある厚生年金の支給額は夫婦2人の金額となっている。言い換えると所得代替率50%は現役男子1人の手取りの半分を退職後の夫婦に支給するという形になる。退職後の生活とはいえ、50%で安心できる水準ではない。

 加入者の「平均」というのも大きな課題を示している。20歳から59歳までの「加入者」の「平均」は30代の後半あたりになるのではないか。とすると、現役世代の平均の50%は、30代後半の平均手取りの半分ということになる。

 米英では退職後の生活費を現役時代と比較する場合、現役世代の最終年収を比較の対象にする。これは現役時代に良い生活を望んで頑張ってきた最後の生活水準を基準にして、そこからどれくらい支出が変化するかをみるためだ。この点で、日本の「所得代替率」は、生活レベルの指標ではなく、年金財政をみるための指標となっている。ちなみに、欧米では「目標代替率」という言葉を使っている。

 3つ目の疑問は「手取り」だ。「手取り」ということは、分母の金額には税金と社会保障費は含まれていない。一方で年金支給額は税金や社会保障費を支払う対象になり得る。実際の年金の手取りはその金額の水準にもよるが、税金や社会保障費を差し引くことになる。分母は手取りで、分子は支給額ということも知っておくべきだ。

 改めて指摘したいのは、所得代替率50%を「現役時代の半分を年金で受け取れるんだ」と楽観視しないことだ。

 ■野尻哲史(のじり・さとし) フィデリティ退職・投資教育研究所(http://www.fidelity.co.jp/retirement/)所長。1959年生まれ。一橋大卒。82年、山一証券入社。山一証券研究所で米ニューヨーク在住アナリストなどを経験した。メリルリンチ証券調査部などを経て、07年より現職。『老後難民 50代夫婦の生き残り術』(講談社+α新書)など著書多数。

 

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