朝の番組に出演している女性アナウンサーのワキ汗論争を覚えているだろうか。女性アナの水色のブラウスに染みだすワキ汗に対し、「見苦しい」「不快」や「一生懸命の証拠」など賛否が論じられた。「Ban汗ブロックロールオン」は、そのワキ汗を抑える制汗剤として2014年2月発売。年間100万個売れれば大成功と言われる市場で、発売5カ月目に250万個を突破した。
ヒットの要因を、開発したビューティーケア事業部の大古勝朗(おおふる・かつろう)さんは「汗ジミ(染み)という“視覚”からの一点突破」という。
きっかけは汗ジミをテーマにすると、「あるある、それ!」とグループインタビューで失敗談が盛り上がることだった。
一方、「ニオイ」では盛り上がることはなく、悩んでいることを隠そうとさえする。着替えることでリカバーできるワキ汗ジミは、女性にとってニオイよりポジティブにとらえることができるのだ。とはいえ、気にする女性は8割に上るという調査結果もあり、先の論争などで、社会的関心の高まりを感じたという。
汗とニオイは女性のワキの二大不安要素だが、従来の制汗剤は「ニオイのケア=嗅覚」「サラサラ肌感のケア=触覚」対策が中心で、「ワキ汗ジミの見た目ケア=視覚」はほとんどなかった。女性の社会進出にともない緊張する場面が増えたことや色の変化が出やすく汗ジミが目立つ素材の流行など、ワキ汗は今日的な悩みといえるかもしれない。
訴求ポイントをワキ汗ジミという一点に絞り、パッケージも「ベタでストレートに訴えた」(大古さん)。だが、ワキ汗ジミというニッチな切り口での訴求に対し、「汗を抑える機能が高いならニオイ対策の方がマーケットは大きい」という反対意見も多かった。これに対し、大古さんは調査結果を基に、「潜在化していたワキ汗の悩みが顕在化しつつある」と説得したという。
ワキ汗ジミの悩みは共感性があるため「ワキ汗失敗談あるある」をHPで公開すると、若い女性を中心に大反響を呼ぶ。さらに、トリンドル玲奈を起用し、その中から象徴的な電車でつり革を持っているシーンを紹介するCMがブレーク、制汗剤市場に「ワキ汗ジミ対策剤」という新たな市場を創出した。 (村上信夫)