では、今後はどうなるのか。まず、台湾のように2%を切るところまで行く可能性は、ゼロとは言えない。しかし、経済成長を見込めない日本で、不動産というミドルリスク資産に2%未満で投資する、というのは現実的でない。
私は、東京都心の不動産価格は、利回り5%あたりが適切だと思う。
この世界的に異様な低金利状態が終われば、より安定的な運用を求めて、日本の不動産市場への投資を引き揚げにかかるだろう。米国の利上げが6月に行われるという噂も囁かれている。
実はこの3%、4%と言っているのは「借り手が付いた場合」。外国からの金融マネーというのは小さくても数十億円単位なので、ワンルームマンションを戸単位で購入するサラリーマンの不動産投資とは違う。100戸のマンションなら、想定賃料で80戸を貸せた場合を前提とする。
しかし、借り手が付くのが70戸になったり60戸の場合は、利回りが著しく低下する。空き住戸には管理コストや税金も発生する。日本の場合は地震のリスクもある。
東京や大阪、名古屋などの大都市では、居住ニーズを上回る量の新築住宅が供給されている。賃貸需要というものは、実際に住みたいと考える人の数しか生まれないので、バブル化しないし、できない。だから、このバブルはいずれ終わる。
■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。不動産会社の注意情報や物件の価格評価の分析に定評がある(www.sakakiatsushi.com)。著書に「年収200万円からのマイホーム戦略」(WAVE出版)など。