ニコン「Df」 余分な機能を削除して写すことにこだわり

2015.09.01


ニコン「Df」【拡大】

 ニコンには研究室という組織がある。研究室も研究員の数も未公表だ。その一つ、後藤研究室室長の後藤哲朗さんは、ニコンのプロ向け銀塩フィルムカメラFシリーズを「F3」から「F6」まで、プロ向けデジタルカメラ「D1」から「D3」まで30年にわたりニコンのフラグシップカメラを作り上げてきた。

 後藤研究室の設立は、2009年。その使命は、「ニコンが決して忘れてはいけないものは何かを考え、掘り起こして、社内に『何か、大切なことを忘れてはいませんか?』『こういう考え方はどうですか?』と問いかけていくこと」(後藤さん)という。

 研究員は社内公募や一本釣りを通して、カメラ好き、写真好きを集めた。その男たちが、最初に語ったのは「最近のカメラはつまらない」「ロゴを隠せば、どこの会社かわからない」だった。

 機能性を追求した結果、今のデジタルカメラは液晶画面と電子ボタンで操作する家電化している。「それはニコンのDNAではない」(同)のだ。

 夢中になって自分たちが欲しいカメラを話し合った。その発想はこれまでの開発の真逆、まず「高速連写でバシバシ撮る機能はいらない」「動画もWiFiもいらない」「画素数は追わない」と減らすことから始めた。すぐに「道具感のあるカメラ」というコンセプトがまとまった。

 わいわい激論を飛ばす男たちの意見を聞きながら、同室主幹研究員、三浦康晶さんはすぐにフリーハンドでデザインを描いた。直線のフォルム、大型の金属製メカニカルダイヤル、角ばった大きなペンタプリズムなど、懐かしい写真機と呼ぶべきデザイン、「ニコンらしいデジタル一眼レフカメラ」(同室研究員の猪原秀己さん)だった。

 余分なものは削除したが、写すことにはこだわり、当時のフラグシップ機「D4」と同じCMOS イメージセンサーと画像処理エンジン「EXPEED 3」を搭載した。難関を乗り越えたため構想から発売まで約4年かかった。

 遊び心はメッセージの発信に持ち込まれた。発表直前に6本のショートムービーを隔日で発信。ボディーデザインの一部や「Df」独特のダイヤル操作を少しだけ開示するが、全貌をなかなか見せないティザー広告に、ファンがどよめいた。

 「フィルム?」「フィルムとデジカメの兼用?」。書き込みが飛躍的に拡大し、自分たちと同じ気持ちを持つファンが大勢いることを確信した。2013年11月発売と同時に2〜3カ月待ちとなる大ヒットとなった。

 「便利さがいつしか人間を追い抜いていた」と後藤さんは振り返る。 (村上信夫)

 

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