長時間労働抑制はサラリーマンを豊かにするか 人手不足の圧力は…

2017.02.09

懇談会で握手する経団連の榊原定征会長(左)と連合の神津里季生会長
懇談会で握手する経団連の榊原定征会長(左)と連合の神津里季生会長【拡大】

 いわゆる「春闘」が始まり、例年通り経団連と連合のトップが顔を合わせた。筆者は、経済団体も労働組合も歴史的な役割を終えた「オワコン」(終わったコンテンツの意味)だと思っているが、近年では彼らの儀式に加えて、賃上げを要請する政権の意向が一枚加わって、春闘は一段と奇妙なイベントになっている。

 交渉の本丸である賃金に関する構図は例年通りだ。(1)政府が賃上げを求め(2)企業経営側はこれに応える姿勢を見せつつも、一度上げると下げにくい月例給与のベースアップに慎重になって(3)労働組合側は月例給与の引き上げにこだわる、という形だ。

 近年は人手不足が進行している。正社員を派遣やパートなどの非正規社員で置き換える企業側の対応では、人手の確保に限界が見えてきそうな情勢なので、例年よりも労働者側が少し強いかもしれない。ただし、これは、組合が役に立っているというよりは、マクロ的な経済環境に起因するものと考えるべきだろう。

 今年の春闘は、賃上げ以外に労働組合側が長時間労働の是正を持ち出したことが目新しい。経営側は「働き方改革」に前向きな態度は見せたい様子なのだが、残業時間の制限など一律の規制の導入には、「業務に支障が出る可能性がある」として消極的だ。

 長時間労働の是正は、労働者の生活の向上につながるのだろうか?

 筆者は、(1)長時間労働の是正自体は必要であり推進すべきだが、(2)長時間労働是正のメリットは先に企業側に発生し、(3)少し時間を置いて労働者側に発生するのではないかと考えている。

 電通社員の自殺問題が大きく報道されて以来、長時間労働は、企業にとって大きな法的リスク要因ともなっており、働き方を、働かせ方を変えざるを得ないことは動かしようがない。

 経営側は残業時間を短縮できるような働かせ方を工夫するだろうし、社員側も長時間労働を会社への忠誠の証しとして自慢するような風潮から、仕事の能率を競うような方向に変化するだろう。

 この過程では、これまで社員が「だらだら残業」で稼ぐことができた残業代だが縮小することが考えられ、企業側では人件費抑制のメリットを取ることができそうだ。こうした能率の改善があるのでなければ、経営側に働き方改革を進めるインセンティブが起きにくい。

 一方、1人の最大労働時間が短縮されると、人手不足の圧力は、やがて一段と高まることになる。時間の経過とともに将来の賃金交渉環境は労働者側に有利に変化しよう。AIやロボットが労働力不足を十分補うのは、かなり先の話だろう。

 結局、労働者の豊かさにとっては、マクロ経済的な好環境を継続できるかどうかが最大の問題だ。 (経済評論家・山崎元)

 
今、あなたにオススメ
Recommended by

産経デジタルサービス

IGN JAPAN

世界最大級のビデオゲームメディア「IGN」の日本版がついに登場!もっとゲームを楽しめる情報をお届けします。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

「ソナエ 安心のお墓探し」では、厳選されたお墓情報を紹介! 相続、葬儀、介護などのニュースもお届けします。