どういうわけか不動産業界はウソをつくことへの罪悪感が、他の社会に比べて小さいように思える。
業者同士の取引の場合は「だまされた方が悪い」というのが常識化している。彼ら同士で勝手にやっているのならいい。しかし、一般消費者をだますのはよくない。
例えば、モデルルームで販売担当者が「このマンションは絶対に値引きしません」と言って契約を結んだ翌日、他の住戸で値引きを始めている−などは日常茶飯事だ。
この場合、販売担当者は上司から「値引きはしない」と言われてそれを信じていたが、実は会社の方針が変わったということがほとんど。担当者がだましたのではなく、会社主導なのだから、よりたちが悪いと思う。
購入を迷っていると「ほかに検討している人がいますから、今申し込まないと買えなくなってしまいますよ」と即決を迫る。これもたいがいがウソ。迷いだすと買わない場合が多いので、考える時間を与えずに決めさせたいのだ。
アンケートで年収や自己資金を正直に書くと、なぜか予算オーバーで返済がきつそうな住戸ばかりを勧められる。ほかにないのかと聞くと「ほかはすべて売約済みで、今はこれしかございません」と言われる。場合によってそういった住戸しか価格が記載されておらず、他の住戸はすべて「売約済」と表示されている価格表を渡される。
実は、あらかじめ予算別に彼らの「売りたい住戸」だけが表示された価格表が何種類も用意されていたりする。
すでに値引きを始めているような物件だと「××××万円お値引きできるのは本日までです」と、即決を迫られる。