中高年の起業家は当欄でも度々取り上げているが、和田京子さんは87歳で現役の女性社長だ。JR小岩駅から歩いて数分の住宅街にある会社を訪ねた。「ほんとは勤めたくて就活も考えたけど、80歳のバーサンでは無理なので」起業することにしたと笑う。
愛知県岡崎市で生まれ育ち、22歳で結婚したが、結核の手術をして2年間は療養生活だった。79歳まで専業主婦として家族を支え、外で働いた経験はない。起業は10年前、高校教師だった夫の死がきっかけ。「手術の時、夫に世話になったので、今こそ恩返しをするときだと一生懸命に介護しました」
夫が他界し燃え尽き症候群に陥っていた。祖母の身を案じた孫の昌俊さんから「頭の体操に」と渡されたのが宅建士のテキスト。どうせ勉強するなら資格の取れる勉強をした方がいいだろうと考えたのだ。「これがまた面白くて」のめり込み、最初の1年は独学、2年目から資格を取るための予備校へ通い始めた。「私たちの若い頃は戦争で学校が焼けちゃって満足に勉強ができなかったから、学校へ行きたかったのよ」
これまで悪徳不動産屋に何度もだまされた経験があり、自分はまともな不動産屋になりたいという気持ちもあった。向学心に燃え79歳で宅建士への挑戦を始めたものの、難関の試験に合格するとは周りも本人も思っていなかった。