「ワーク・シフト」が始まっている。ネットやAI(人工知能)などを利用し、これまで存在しなかった仕事を従来にはない方法でこなす「新しい仕事」への転換だ。
この傾向はネットベンチャーが成熟してきた10年ほど前から始まっている。昔は一流企業に就職することが大学生の最大の目標だったが、10年ほど前から、大企業に就職しても「なーんだ、サラリーマンか」と言われるようになった。
今では、「とりあえず適当に2、3年、サラリーマンをやってみる」とか「就職先は大企業でもベンチャーでも、どちらでもいい」というニュートラルな学生が一般的だ。
そういう若者たちが口にするのは、「ピコ太郎はすごい!」という称賛の言葉だ。ヘンテコだが、アクの強い服と踊りを自作自演し、映像をYouTubeにアップして、あっという間に世界の人気者になったヒーローだからだ。
今の若者には、成功者のいない企業人よりも、単独でネットデビューして手っ取り早く夢をかなえたピコ太郎の方がヒーローなのだ。
鉄拳のパラパラ漫画も、言語を超えて世界の共感を呼んでいる。映画「この世界の片隅に」を大ヒットさせた片渕須直監督も、クラウドファンディングで3374人から約3900万円を集めて映画を作った。個人の力を結集すれば、銀行もスポンサーもいらないことを証明したのだ。
米国では、社長1人の自動車メーカーが産声を上げた。自分の欲しい車のスケッチを描き、アプリで3D図面を起こし、3Dプリンターでサンプル製作して、ネットでオーダーを取り付けてから自動車メーカーに生産・組み立て・納品までを発注する。