明石町や湊に住んでいる人は、決してそこが銀座エリアだとは思っていない。
さらに、それらのマンションに住む人は、誰かに「マンションの名称は何というのですか」と聞かれると「×××銀座東」と答えることになる。するとそれを聞いた人が「へぇ、銀座に住んでいるのですか」と驚くかもしれない。そういうときに、「いえいえ実は…」と言い訳をすることになる。
それらの物件を購入して長く住むと、それ以後の人生で何度「銀座東」の言い訳をしなければならないのだろう。かなりお気の毒だ。
そもそも「銀座東」という名前が付いていても、そこが銀座からどれくらい離れているのか現地を見れば即座に理解できる。「銀座東」という名前だから購入しようという人はいたとしても、それはやや虚栄心が強い方だろう。
そういった名前を付けた側は「『銀座東』にしておけば、それに惹かれて見に来る人も増えて販売促進につながる」などと考えているのかもしれない。
マンションの名称は、誰でも意味が分かって覚えやすいものがいい。やたらと長いものや、実際との落差や違和感が生じるものは、後々まで迷惑を引きずる。この悪習は改めるべきだ。
■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。