自動車産業“土俵際”…貿易赤字が慢性化か

★岐路の輸出大国 31年ぶり貿易赤字

1.28

 日本が「輸出立国」の看板を下ろす日が現実になりつつある。かつてお家芸だった家電製品は既に生産の多くが海外に移転。エースの自動車産業も歴史的な円高で土俵際まで追い詰められ「根こそぎの空洞化」(志賀俊之日本自動車工業会会長)の危機に直面。外貨の稼ぎ手が日本を去り、貿易赤字が慢性化する恐れが強まっている。

 ■理屈を超えて

 「自動車産業が外貨を稼ぎ、雇用を守る。理屈は超えているが、石にかじりついてでもがんばる」。トヨタ自動車の豊田章男社長は経営合理性よりも日本経済への使命感を優先し、国内生産300万台を守り抜くと宣言する。

 自動車は昨年、東日本大震災後の約1カ月間、国内生産が完全にストップ。だが下期の大増産で盛り返し、通年では前年比13%減ながら7兆円強の貿易黒字を確保した。

 だがトヨタの使命感をあざ笑うかのように円高が進行。海外市場ではドイツや韓国車が通貨安を追い風に日系メーカーからシェアを奪っている。利益を犠牲にしながら輸出を続けるトヨタの姿勢に、金融市場は「構造改革を避けている」(メリルリンチ日本証券の中西孝樹アナリスト)と冷淡な目を向ける。

 ■海外で生産

 ただ、ここまで踏みとどまってきた自動車も現実には空洞化が始まっている。

 トヨタは国内生産300万台を維持するものの、部品は今後、韓国製などを積極的に採用。海外に輸出していたエンジンや変速機などの主要部品も現地生産に切り替える。トヨタを支えてきた国内の下請け企業にとっては大打撃だ。

 ホンダはスポーツカー「NSX」を最新鋭ハイブリッド車として復活させるが、生産地に選んだのは米国だ。日産自動車は電気自動車を米国や中国でも現地生産する。日本は高付加価値のものづくりで生き残るとのシナリオにも疑問符がつく。

 ■なし崩し

 一方、家電メーカーは既に競争力を失い、国内工場を次々と閉鎖。ソニーは海外生産比率が7割強。テレビはマレーシアや中国、デジタルカメラはタイでの生産が中心だ。より深刻なのは日本で新たに生産し、会社を支える成長の芽が見つからないことだ。

 目立たない存在ながら貿易黒字に貢献してきた素材や電子部品メーカーも日本に見切りをつけ始めた。旭化成の藤原健嗣社長は「自動車や家電が海外に出ていく。素材を供給するわれわれも一緒に出ていかざるを得ない」と覚悟を決める。

 「一度ものづくりの基盤を失えば、円安になって再び戻ろうとしても芽は出ない」。自工会の志賀会長は危機感を抱くが、円高とライバル勢の猛追という現実の前に、空洞化はなし崩しで進んでいる。

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