【みるほどにハマる北野映画の神髄】ずっとイメージを温めていた下駄タップシーン「座頭市」

異色の座頭市だった

★(4)

 独特のグロテスクなシーン、血が派手に飛び散る残酷シーン満載。これがなければもう“たけし映画”とはいえない。一見、コメディチックに見えても、その裏にある残酷性をえぐりだすのが神髄なのだから。とりわけ時代劇にはありえない歌や踊りの裏に潜むものをとくとご覧あれ。

 農民が現代的なリズムで踊ったり、祭りのシーンで下駄をはいてタップダンスをする人たちが現われる。このミュージカルを意識した場面、実は監督の頭の中にはずっとあったようだ。

 さかのぼること1998年。文藝春秋で、座頭市の大先輩である勝新太郎とビートたけしが座談会をしたことがある。

 このとき勝から、農民が握り飯を食いながらバタバタと逃げ回り、それを追いかけて旅人がくる。市もそれにまぎれて踊りだし、殺陣をするっていうのはどうだい、と提案されている。どうやらこのイメージをずっと温めていたようだ。もちろん「本家の勝さんは超えられませんよ」と謙遜してはいるが。

 当時の浅草ロック座の斎藤智恵子会長は、勝新太郎の債権者の1人であったので、「座頭市」の映像化権が他社に移っていたのをわざわざ買い戻し、たけしに新しい座頭市を作ってもらいたいと監督オファーをしたというのが、この奇抜な映画の誕生秘話でもある。

 ところが、公開された映画を見た千葉真一は「時代に媚びた映画だ。こんな映画が増えるのは困る」とバッサリ。たけしの盟友でもある松方弘樹までも「外国の映画賞を意識しているんじゃないか」と正面から批判した。

 一方「アウトレイジ」がフランスで酷評された時とは逆に、ベネチア国際映画祭の銀獅子賞を受賞するなど、国内外で評判は高かった。

 映画評論家の蓮實重彦氏は、ある雑誌で「この金髪の座頭市はまぎれもなく宇宙人である」と絶賛している。

 当然、この作品もR-15指定。テレビで放映された際、民放では“アブナイ”シーンはカットされたが、WOWOWではなぜかノーカットだった。保護者団体からたくさんのクレームが届いたとか。これも人気のなせる業か。(望月苑巳)

 ■座頭市

 2003年9月公開。北野映画最高となる興行収入28億5000万円。日本アカデミー賞などを総なめ。

 〈あらすじ〉

 ヤクザの銀蔵一家に苦しめられている、ある宿場町に盲目の市(ビートたけし)がやってくる。賭場で儲けた市の金を狙って芸者姉妹が襲ってくるが、聞けば2人は親の仇を探しているという。一方、浪人の服部源之助(浅野忠信)もこの町に流れ着き銀蔵一家の用心棒に。やがて2人は…。

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