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現ローマ法王が身近な存在に…軍事独裁政権下、苦闘の青春期から壮年期を描く「ローマ法王になる日まで」

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 ローマ法王(教皇)はさまざまなメディアで報道されているので、その姿を目にしたことぐらいはあるだろうが、やはり日本人には縁遠い存在だ。が、公開中の映画『ローマ法王になる日まで』を見れば、これまでの法王のイメージは一変し、ずっと身近な存在になることは間違いない。

 本作は、2013年に第266代のローマ法王に就任したフランシスコ法王の青春期から壮年期に焦点を当てている。

 フランシスコ法王は、就任する前の名前をホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(演じるのはロドリゴ・デ・ラ・セルナ)といい、イタリア移民の子としてアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで生まれ育った。

 大学で化学を学んでいる時に信仰に目覚め、イエズス会に入会。35歳の若さでアルゼンチン管区長に選ばれるが、当時アルゼンチンを強権的に支配していたビデラ大統領による軍事独裁政権(1976~83年)とは微妙な緊張関係にあった。

 軍事政権が権力を掌握してすぐ、2人の神父が海軍によって拉致され、拷問を受ける事件が発生するが、その際、ベルゴリオは政府要人と接触し2人を無事救出する。

 この事件を映画は正確に再現しているが、実はもっと多くのカトリック教会の神父や修道女が軍事政権に協力していた。そのことを知れば、ベルゴリオの立場もより理解できるだろう。

 他にも軍事政権の悪辣な犯罪行為が登場するが、それらのシーンは、コスタ=ガブラス監督の『ミッシング』(1982年)など中南米軍事政権の実態を暴いた作品を思い出させる。

 その点について、先日、上智大学で行われたシンポジウム(4月27日)でダニエーレ・ルケッティ監督に質問したところ、「ガブラス監督を尊敬し、会ったこともある」との答え。映画に描かれている軍事政権下で、苦しみ抜いたベルゴリオの体験は、現法王のいくつもの行為に現れているといえよう。 (瀬戸川宗太)

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