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宮内悠介さん、文学界のトリックスターが目指す「何者をも拒まぬ作家」 (1/3ページ)

★宮内悠介さん『あとは野となれ大和撫子』(KADOKAWA・1600円+税)

 直木賞と芥川賞、両賞の候補となった稀有な作家である。単著を上梓した本格デビューから5年。先般、三島賞受賞が決まったが、純文学系からエンタメ系までオールラウンダーを目指す。今回、エンタメ作品である新作について聞いた。 (文・竹縄昌 写真・菊本和人)

 --三島賞受賞決定おめでとうございます

 「ありがとうございます。先日、アパートの大家さんのご家族からサインを求められて、じわじわと実感が伴ってまいりました」

 ■百兎も千兎も追う

 --かつて直木賞、芥川賞の両方の候補にもなりました

 「こうした候補になるだけでも私たち書き手にとっては宝くじに当たったようなものですが、評価いただけたことはとてもうれしいです。私みたいな変な奴がいることで、ある種トリックスター的にいくばくかでも業界の活性化につながればな、とそんなことを考えます。どっちが欲しいとよく聞かれますが、これは迷います。二兎を追う者は一兎をも得ずともいいますが、百兎、千兎追ってやっと一兎を得るというのももう一面の真実です。とすれば、両方と言っておくべきでしょうか」

 --さて、本書ですが発想はいつ頃に

 「アラルスタンという架空の国が舞台です。場所は中央アジアのアラル海。アラル海というのはかつて世界4位の大きな湖だったのが、スターリンの灌漑(かんがい)政策で大幅に縮退して、南側はほとんど消滅してしまい、20世紀最大の環境破壊とも言われているところです。22~23歳のころ、南アジアを旅していて、そのとき英語のガイドブックのコラムで初めて知りました。以来、アラル海が干上がる前に、ここに行ってみたい、ここを舞台に小説を書いてみたいと思っていました」

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