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【中本裕己 エンタなう】陸・海・空から史上最大の救出描く異色の戦争映画「ダンケルク」

 包囲された戦場から数多くの兵士がひたすら撤退し、いかに生き延びるかのみに集中した異色の戦争映画「ダンケルク」(公開中)。金に糸目をつけない大がかりなSF作品などで知られるクリストファー・ノーラン監督が、初めて実話に迫った。

 第2次世界大戦の西部戦線。独軍はポーランド侵攻の後、フランス北部のダンケルクまで英仏連合軍を追い詰めた。チャーチル英首相は、海岸に取り残された兵士40万人の救出を命じる。

 ドーバー海峡の荒波を前に、英兵たちは漠とした砂浜に隊列、ほんの三十数キロ先の故国に向かう船を待つが、独軍の空爆は桟橋を容赦なく破壊し、絶望のふちに立たされる。

 映画は救出に尽力した人々の「陸の1週間」「海の1日」「空の1時間」が同時に進行する。最初は違和感があるが、クライマックスに向けて、異なる尺の時間軸をシンクロさせた意味が徐々に分かる。戦況の悪化から民間の船舶を総動員したダイナモ作戦と呼ばれる救出劇。その史実を立体的な映像の魔術で再現した監督の手腕はさすがだ。

 名手ハンス・ジマーの音楽もじわじわと戦場の現実を後押し。スター的な役者は少なく、台詞も最小限で、長い沈黙が続く。敵軍の気配や心臓の鼓動、息づかいと音楽が完全にリンクする。見ているこちらが息苦しくなる。

 なのに、もう一度見たい衝動にかられるのだ。(中本裕己)

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