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【没後20年 藤沢周平ドラマ秘録】監督が一番苦悩する「秘剣」 『必死剣鳥刺し』豊悦vs吉川は観る者もグサリと刺されたような気持ちに (1/2ページ)

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 藤沢周平作品には人気シリーズがいくつかあるが、「秘剣もの」は多くの作品が映像化されている。

 ドラマでは萬屋錦之介主演「宿命剣鬼走り」、加藤剛主演「残月の決闘」、映画ではアカデミー賞候補にもなった真田広之主演「たそがれ清兵衛」、永瀬正敏主演「隠し剣鬼の爪」、木村拓哉主演「武士の一分」の山田洋次3部作など。すべてに共通するのは、秘剣の遣い手である主人公がヒーローではなく、追い詰められ、最後の最後に秘剣を遣うところだ。そこには藩内の権力争いや陰謀がある。主人公は時に怒り、時に苦い事情を飲みこんで剣をとる。派閥、裏工作、ニセ情報…この矛盾や悲哀は現代の企業人にも通じる。

 「必死剣鳥刺し」も武家の都合で抗争に巻き込まれた男の悲劇を描く。

 東北の海坂藩では困った問題が起きていた。藩主の右京太夫(村上淳)の寵愛をかさに愛人、連子(関めぐみ)が政治に口を出し、まじめな老藩士に切腹を命じたり、歯向かう者は「ひとり残らず打ち首にしてやればいいのです」と領民を苦しめていたのだ。藩士の兼見三左衛門(豊川悦司)は捨身の覚悟で、ついに連子を刺殺。しかし三左衛門に下された罰は、1年の閉門という寛大なものだった。「なぜ上様はわしを生かす」。悩む三左衛門の暗い予感は的中。ある日、三左衛門は中老、津田民部(岸部一徳)から、藩主の座を狙う別家の隼人正(吉川晃司)を討つよう命じられる。津田は三左衛門が絶体絶命の時に遣う必勝の技「鳥刺し」を会得していると知っていたのだ。

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